「打てない、守れないで…」西武の“出世順位”ドラ3入団の19歳が経験したプロの壁

西武・山村崇嘉【写真提供:埼玉西武ライオンズ】

東海大相模3年時は主将、コロナ禍で甲子園が中止になった

2021年シーズンは最下位に終わった西武。逆襲に向けて若い力の台頭に期待がかかるが、2020年ドラフト3位で東海大相模高から入団した山村崇嘉内野手は1年目に2軍で85試合出場。プロの壁に苦しみながらもかけがえのない経験を積んだ19歳が、東海大相模高時代とプロ1年目を振り返ってくれた。

山村は、多くのプロ野球選手を輩出している中学硬式野球の強豪「武蔵府中リトルシニア」でプレー。神奈川の名門、東海大相模高で甲子園を目指すため東海大相模中に進学した。「中学1年生の時に、高校の野球部が夏の甲子園で優勝しました。学校でよく選手に会うのですが、小笠原さん(慎之介、現中日)がかっこよくて、憧れていました。先輩たちのようになりたいと思っていました」。

自身も聖地での全国制覇を夢見ていたが、2年夏は3回戦で中京学院大中京(現中京)に敗退。リベンジを誓った3年時は新型コロナウイルス感染拡大の影響により出場を決めていた選抜大会、そして夏の甲子園ともに中止になった。チームでは主将を務めていたため、やり切れない思いの中、チームメートを鼓舞することに力を注いだ。

「すごくショックでした。でも神奈川県の独自大会と甲子園交流試合があるので、モチベーションをそこに持っていきました。チームのみんなも動揺していたのですが、実際に会うことができなかったので、グループラインで声を掛け合いました。独自大会は絶対に負けられないという気持ちでした」

野球部の活動ができない期間は、バッティングセンターに通い、家では父親にトスを上げてもらうなどして練習に励んだ。そして、神奈川独自大会で見事優勝を成し遂げ、ドラフト会議で西武から3位指名を受けた。

「こんなに上の順位でいいのかと、正直びっくりしました。西武のドラフト3位が出世順位ということは、ドラフト後にネットでたまたま見て知りました。しっかりやらないといけないなと思いました」。西武の3位指名は浅村栄斗(現楽天)、秋山翔吾(現レッズ)、金子侑司、外崎修汰、源田壮亮と錚々たる選手が揃う。

1年目は2軍で85試合出場、打率.217で6本塁打だった

今年は主に遊撃を務めたが、取り組み始めたのは高校3年の夏。経験は浅いが、ゴールデングラブ賞を3度受賞している源田壮亮内野手から「言葉では説明できない」というほど話を聞き、その技術を吸収しようとしている。「(以前は)ファーストとサードをやっていましたが、ショートは打者からの距離が違うので、最初は足の運び方が難しかった。源田さんの守備はグラブにボールが吸い込まれていく。何でも簡単にやってしまってすごいと思いました。レベルが違うと感じました」。

ルーキーイヤーは「全てにおいて足りない」と力の差を感じ、打撃、守備ともに基本から取り組み、下半身強化に力を入れた。「バッティングと守備がアピールポイントでしたが、打てない、守れないで……もう、打てない日やエラーした日は落ち込みます。そういう日は、コーチにいろいろ聞いて、ひたすら練習します」。

同じ東海大相模高から2020年ドラフト5位でロッテに入団した西川僚祐外野手とは、よく連絡を取り合っている。「『打てないわー』ってお互いに言っています。今は違うチームになったので、ライバルです。負けてられないなと思っています」。

プロのレベルの高さに落ち込むことが多かった1年だったが、今季まで2軍監督を務めた松井稼頭央ヘッドコーチは「野球センスがある。しっかり体を鍛えてほしい」と期待を寄せる。ルーキーイヤーは2軍で85試合に出場、打率.217、61安打、6本塁打、33打点。その才能を開花させ、1軍で躍動することができるか。19歳の飛躍に期待したい。(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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