【中医協】薬剤師会、敷地内薬局を有するグループ薬局への評価引き下げ提案

【2021.11.28配信】厚生労働省は11月26日に中央社会保険医療協議会総会を開き、調剤報酬の配分について議論した。その中で、敷地内薬局への報酬引き下げの方向が示された。敷地内薬局への報酬を想定している特別調剤基本料に関して、日本薬剤師会常務理事の有澤賢二氏は、算定している薬局の調剤料・薬剤料の減算のほか、薬学管理料加算の評価引き下げを求めた。さらには特別調剤基本料を算定する薬局を持っている同一グループに対し、「何かしらの評価を下げることも方策」とした。提案が実現すれば、敷地内薬局1店舗への影響では済まず、グループ全体への減収につながる可能性がある。

薬剤師会・有澤氏、敷地内薬局は「調剤料・薬剤料の減算、薬学管理料加算の評価引き下げを」

有澤氏は基本料に関して、「そもそも基本料は一本化されており、例外的に経営効率等を勘案してその他の調剤基本料として2・3があるということになっている」と述べた。
その上で、「特定の医療機関と不動産の賃貸借関係がある薬局は同一グループの薬局の経営状況も考慮しながら適切な設定が必要」とした。
同一敷地内薬局については、「特定の医療機関と不動産の賃貸借関係がある薬局として要件が定められている。今回の改定ではさらなる適正化を進める必要がある」(有澤氏)とした。
特別調剤基本料の該当性については、「判断が困難な事例が挙げられているが、どれも特別調剤基本料に該当するもので、これらの事例が網の目をかいくぐらないようにすることが必要」とした。一方で、薬局側の意図的でないケースへの配慮を求めた。「現行のルールで建物の所有者が変更になり、薬局側が意図的でなく、かつ不可抗力的な理由によって保険医療機関との不動産賃貸借関係、取引関係となる場合もあり、その場合には一定期間、特別調剤基本料には該当しないこととするなどの配慮が必要ではないか」と述べた。
「特別調剤基本料の要件の見直しや判断基準となる疑義解釈の整理など明確化をお願いしたい」とした。
敷地内薬局に関して、「以前から議論の場を設けていただくお願いをしてきた。今回、論点として取り上げていただいたことに感謝します」と謝意を述べた。適切な医薬分業のあり方や地域包括ケアシステムにおける薬剤師・薬局の活用、かかりつけ薬剤師の推進上、敷地内薬局はこれらに逆行するものであることに問題意識を表明。さらに近年、大学病院などを中心に病院の敷地内に保険薬局を開設する事例が増加していることに遺憾の意を示した。「応募要綱のなかで診療室の設置を求めるなど大病院に利益を供与する実態については大変遺憾であり、病院と経済的・機能的・構造的な独立性という視点であまりにもひどいケースが目立っている。このような運営は公費を使っている健康保険事業の適正運営という観点から決して看過できるものではない」と抗議した。
報酬だけでなく保険指定の面からも施策を要望。「独立性が担保できない、あるいは機能が院内薬局と変わらない薬局であるなら保険指定する必要性はない。療養担当規則におけるルールの変更をお願いしたい」と述べた。
昭和57年5月27日の「調剤薬局の取り扱いについて」との通知を挙げ、「医療機関と同一の建物、または敷地にあって、総合的に判断して医療機関の調剤所とみなされる調剤薬局については保険薬局の指定を行わないこと」とされていることを紹介。「総合的に判断してというところが地方厚生局の判断として重要だと思うが、通知などで適宜、独立性が判断されない事例が発生した場合には解釈を通知していくような運用をお願いしたい」とした。
診療報酬上の対応としては特別調剤基本料を算定している薬局の調剤料・薬剤料について減算を行うことや、医薬分業の推進に逆行していることから薬学管理料の加算の評価を下げたり算定不可したりするなどの対応、特別調剤基本料を算定する薬局を持っている同一グループには何かしらの評価を下げることなどの見直し・検討も一つの方策ではないか」とした。

なお、特別調剤基本料の判断が困難な事例として、事務局では以下を挙げていた。
・医療機関Aが賃借する不動産を第三者Xが賃借し、当該賃借人Xと薬局Pの間で賃貸借契約を行っている
・医療機関Aが所有する不動産を第三者Xが賃借し、その不動産を当該貸借人Xから第三者Yに賃借し、当該貸借人Yと薬局Pの間で賃貸借契約を行っている
・病院Aの近隣に開設していた薬局Pが敷地内に移転し、指定日を遡及して保険薬局の指定を受けている
・医療機関Aとの関係性が不明な事業者Bが所有する不動産を第三者Xが賃借し、当該賃借人Xと薬局Cの間で賃貸借契約を行っている
・医療機関Aからの公募に応じて開局している薬局Pが、開局時期の指定を受けていない

医師会・城守氏「敷地内薬局の調剤料は医科点数に準じて日数に関係ない点数に」

基本料について日本医師会常任理事の城守国斗氏は、医療経済実態調査において店舗数の多いグループに属する薬局はコロナ禍であっても増益となっており、損益率分布では経営効率に大きな差異があることに触れた。
敷地内薬局については、特別調剤基本料の要件設定の趣旨を踏まえていない事例が散見されるとし、医科点数の調剤料に準ずる報酬とすることを提案。「厚生局にも該当性がきちんと判断できるように基準を明確化することも一つの対応方法だと考えられるが、制度の抜け道を一つ一つふさぐような対処方法には限界があると思う。敷地内薬局はいわば病院薬局の外注のような形態とみなせることもあり、報酬を医科点数の調剤料に順ずるということにして、日数に関係なく内服薬11点、外用8点にした上で、加算についても同様にすべきと考えている」と述べた。
敷地内であることで統一化する案も提示。「医療機関と薬局の関係性が複雑化している事例が散見されるため、構造上同一敷地内にある薬局は敷地内薬局として統一化する、一本化する考え方がいいのではないか」とした。
加えて要望として、「そもそも第2薬局化のような敷地内薬局に関しては中医協ではなく国として薬局のあり方を検討していただきたい」と述べた。

© 株式会社ドラビズon-line