若者による家族の介護の実態『ヤングケアラー介護する子どもたち』発売!

毎日新聞の連載をもとに書き下ろした書籍『ヤングケアラー 介護する子どもたち』(毎日新聞取材班 著)が11月27日に毎日新聞出版から発売。本書は、 第25回新聞労連ジャーナリズム大賞・優秀賞を受賞した毎日新聞の連載「ヤングケアラー 幼き介護」に大幅に加筆、 再構成したもの。 学校に通いながら、 家族の介護をする子どもたちがいる。 父母や祖父母、 きょうだいに病気や障害があるため、 一番身近にいる若者たちがそのケアを担ってきた実態は、 これまであまり知られていなかった。 家族だからという理由で「手伝い」としてしか見られてこなかった介護。 しかし、 家族を支えるために、 自らの学業や生活を犠牲にせざるを得ないこともある。 彼ら「ヤングケアラー」たちの存在を認知してもらうため、 記者が丹念に取材し、 追いかける過程を描いたノンフィクション。

本文より

「ヤングケアラーって知ってます?」向畑が唐突に尋ねた。 「……なにそれ」耳慣れないその言葉は、 家族を介護している子どもを指す用語だ、 と向畑は説明した。 介護の負担が重くなると、 学業や友人関係、 就職にも悪影響が出て、 時にはその子の人生を左右してしまうケースもあるようなんです―― ヤングケアラーの多くは思春期にあたり、 ケア(介護や世話)の内容は家事、 身体的な介助、 見守り、 情緒面のサポートなど多岐にわたる。 彼らは成人した介護者と違ってまだ社会経験が乏しく、 年相応以上の責任や役割を課されてしまった場合、 学校生活や心身の健康に悪影響が生じ、 遅刻や欠席、 成績の低下や友人関係に支障が出ることも少なくないとされる。 確実に存在しているはずのヤングケアラーは社会の陰に埋もれ、 多くの人々の目に入らない「透明な存在」だった。

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