アフリカ各国に“甲子園”を 松井秀喜氏が普及に協力「キャッチボールしたい」

会見した友成代表理事(前列左)とアフリカ各国大使【写真:宮脇広久】

代表理事「私は松井さんに関する本を28冊読みました」

巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏が、アフリカへの野球・ソフトボール普及に乗り出した。一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興財団(J-ABS)の「エグゼクティブ・ドリームパートナー」に就任。11月30日に都内で記者会見が行われ、米ニューヨーク在住の松井氏はビデオメッセージを寄せた。まずはアフリカ各国に日本の甲子園大会のようなイベントを広める「アフリカ55甲子園プロジェクト」に携わる。55は松井氏の現役時代の背番号であると共に、アフリカの国・地域の総数でもある。

J-ABSの活動を主導する友成晋也代表理事は、慶応高、慶大時代に野球部に所属。民間企業勤務を経て、JICA(独立行政法人国際協力機構)に入職し、ガーナ、タンザニアのナショナル野球チーム監督を歴任するなど、長年にわたってアフリカへの野球普及に取り組んできた。活動に専念するためにJ-ABSを立ち上げ、昨年末にJICAを早期退職した。

松井氏に協力を要請した理由を、友成代表理事は「アフリカでは『礼に始まり礼に終わる』日本式の野球が、青少年の健全育成に役立つと評価されつつあります。そういう意味で松井さんは象徴的な存在」と説明する。「私は松井さんのことを知りたくて、松井さんに関する本を28冊読みました。面識は全くありませんでしたが、細い人脈をたぐり、ようやくご本人にたどりつきました」と笑う。今年8月にニューヨークを訪れて直接打診し、快諾を得たと言う。

“初仕事”はタンザニア甲子園大会

今月12日には、アフリカ東部のタンザニアで、第9回「タンザニア甲子園大会」が開幕する。松井氏は“初仕事”として同大会にメッセージを寄せ、グラウンドには等身大の写真パネルも飾られる予定だ。同大会は、タンザニアのセカンダリースクール(14~17歳)の学生が対象で、男子野球8チームと女子ソフトボール6チームが選抜され参加する。

友成代表理事は「日本の甲子園大会のように、たくさんの人々が夢を追う場所にしたい」との思いを込め、まずはこれまで野球振興に携わってきた7か国(ガーナ、ウガンダ、ザンビア、南アフリカ、ケニア、ブルキナファソ、南スーダン)でも同大会開催を目指す。そしてゆくゆくは、アフリカ全体へ広げていく意向だ。ホームページでは、年間1口100万円(法人)と月1000円から(個人)の「ドリームパートナー」を募集している。

松井氏は会見中に公開された動画メッセージの中で「状況が許せば、私自身もアフリカに行ってみたいと思っています。アフリカの少年少女とキャッチボールがしたいです」と語っている。友成代表理事も「アフリカには、行ってみなければ分からない良さがあります。新型コロナウイルスのオミクロン株の拡大状況などを見ながらですが、松井さんご自身に行っていただける日が早く来ないかなと思っています」と胸を躍らせる。当面は「ニューヨークとアフリカをオンラインでつなぎ、野球教室ができないか検討中」だという。

野球とソフトボールは、次回の2024年パリ五輪の実施競技から除外される。将来的な復活には、世界的な競技人口増加が欠かせない。“野球大使”としても、松井氏に寄せられる期待は大きい。“ゴジラのアフリカ初上陸”の日が待ち遠しい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2