栗山ジャパンに漂う“サプライズ抜擢”の期待 球界の変化を察知「主力が若返ろうと…」

就任会見に臨んだ侍ジャパン・栗山英樹監督【写真:荒川祐史】

日本ハム監督として戦う中で感じた“新風”を還元

野球日本代表「侍ジャパン」トップチームの監督に前日本ハム監督の栗山英樹氏が就任すると2日発表され、都内で記者会見が行われた。栗山氏の契約期間は、2023年3月に予定されているワールド・ベースボール・クラシック(WBC)までの1年半しかなく、当初から4年が与えられた稲葉篤紀前監督と比べて短い。大会までの強化期間を取れない中でも「主力が若返ろうとしている時期に見える」と口にしており、選手選考や戦い方では“栗山色”の新たな風を吹かせてくれそうだ。

侍ジャパンと言えば、この夏の東京五輪で悲願の金メダルを獲得したチームが記憶に新しい。稲葉篤紀監督率いるチームは、スモールボールをベースに、まずは守りからという日本野球の“スタイル”を示した。栗山ジャパンのベースは、このメンバーになるのかと問われると、新指揮官はまず五輪チームの戦いを称えた。しかし、それだけでは終わらなかった。

「選手の状態はその年によって全然変わるし、時期によっても全然違う」

代表監督への選出条件として、侍ジャパン強化委員会ではNPBでの監督経験か、日本代表の監督経験を必須とした。これは目標とする大会までの期間が短く、一から日本球界の現状を把握していくようでは間に合わないと判断したためだという。さらに「短期決戦での経験がある人」も条件とされた。「今の」球界の流れを知る人材が最優先だった。

その上で栗山監督は「あまり、(固定された)イメージを持たないようにはしているが、主力が若返ろうとしている時期に見える。日本球界の中心になる選手が出始める感じを受けている」と、日本ハム監督として戦う中で感じた新旧交代の流れを口にした。

大谷翔平にも「必要とあらばどこに行こうとお願いに行く」

球界を見渡せば、高卒2年目ながら活躍著しい選手がいる。日本シリーズでも好投したヤクルトの奥川恭伸投手、大器の片鱗を見せたロッテの佐々木朗希投手、他にも優勝したオリックスの宮城大弥投手、紅林弘太郎内野手らは、経験の無さを補って余りある爆発力で1軍の戦力となった。「駆け上がってほしいという思いはあります」。上手く世代交代を果たし、次に渡すのが自分の役目だと心得ているかのようだった。

また、WBCは大リーグ機構が主催する大会のため、日本人大リーガーを招集できる可能性も生まれる。「メジャーを肌で感じている選手の経験は凄く大きい。日本でプレーしている選手が憧れる選手ばかり。そういう選手と一緒にやることにも凄く意義がある」と、若いチームに合流することで生まれる“相乗効果”まで思い描く。

特に注目されるのは、日本ハムで投打二刀流の起用法を確立するなど、師弟関係にあったエンゼルスの大谷翔平投手だ。代表でプレーできるかは本人や所属チームの意思、さらに契約内容にも左右されるため慎重に言葉を選んだものの「ひとつ言えるのは、(大谷)翔平はバッターの大谷とピッチャーの大谷と2人いて、全体像の中で必要なのであればどこにいようとお願いに行く。アメリカの選手だろうと、勝つために必要な選手は呼ぶ」とキッパリ。「勝つことしか考えていない」と言う計画の中で必要とあらば、なんとしてもチームに加えるつもりでいる。

目を配っているのは、すでに名を成した選手に限らない。「大谷選手だけではなく、NPBでプレー経験のない選手にもいい選手はいると思っている」と“秘密兵器”の存在も匂わせた。

初陣は来年3月に行われる台湾との強化試合に決まった。現在指揮官を支える首脳陣についても人選中で「時間を下さい」と繰り返した。まもなく輪郭を表す栗山ジャパンには、日本ハムで見せてくれたようないくつもの驚きが仕込まれているはずだ。(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

© 株式会社Creative2