西武渡辺GMが内海に見出した“兼任コーチ”の適性「アドバイスが凄く的確」

契約更改交渉に臨んだ西武・内海哲也【写真:宮脇広久】

「選手として1軍にいない時でも、コーチとしている可能性がある」

西武の内海哲也投手が2日、埼玉・所沢市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、1125万円減の年俸4500万円でサインした。来季は投手コーチを兼任する。巨人から移籍して3年が経ち、チーム最年長の39歳となったベテランに西武がコーチ兼任を持ちかけたのはなぜか。渡辺久信GMが理由を明かした。(金額は推定)

内海は今季、1軍ではわずか2試合登板で1勝0敗、防御率7.71に終わった。それでも渡辺GMは「選手としても戦力だと思っている」と強調する。「ファームでは1年を通じて投げてくれたし(イースタン・リーグ14試合5勝2敗、防御率3.26)、故障はない。今年は1軍でのチャンスが少なかったが、タイミングの問題。まず来年2月のキャンプでは、選手として体をつくってほしい」と語った。

渡辺GMによると、来季の内海の立場は「選手として1軍にいない時でも、コーチとしている可能性はある。どういうスタイルが一番いいのか、現場の首脳陣とも話し合っていきたい」と不確定な要素が多い。だが「ウチに来て3年。彼の人となりを見ていたら、指導者に向いている、きっといいコーチになると思った」と確信を持っている。

これまでも内海は、若手投手から求められれば、惜しげもなく自分の豊富なキャリアから助言を与えてきた。「そのアドバイスが凄く的確。本職のコーチもいる中で、どこまで踏み込んで指導していいのか遠慮があったと思うので、それならコーチの肩書を付けた方が内海本人もやりやすいだろうと考えた」と渡辺GM。球団からのコーチ兼任の打診を、内海は「いいんですか!?」と喜んだという。

若手からの厚い人望、温かい人柄を示すエピソードの数々

実際、内海は若手からの人望が非常に厚い。3年目の21歳・渡邉勇太朗投手は今年1月、奄美大島で行われた内海の自主トレに弟子入り。期間中、心に刺さった言葉などを「内海さんノート」として書き留めた。8月15日の楽天戦でプロ初先発初勝利を挙げると、お立ち台で「ファンの皆さん、両親、家族、親戚と内海さんに伝えたい」と口にしたほどだ。

巨人時代の後輩である宮國椋丞投手が昨季限りで戦力外通告を受け、所属先が決まっていないと聞くと、奄美大島へ呼んで練習を共にした。宮國は3月にDeNAと育成契約を結び、8月には支配下登録。9月7日、古巣巨人を相手に5回2失点の好投で移籍後初勝利を挙げた際には「内海さんに報告したら、僕自身より喜んでくれました。(電話口で)ちょっと叫んでいました」と感激の面持ちで明かした。内海の温かい人柄がうかがえるエピソードである。

内海は15年間在籍した巨人時代に最多勝を2度、最多奪三振を1度獲得し、開幕投手を3度務めるなど輝かしい実績を誇った。そして2018年オフ、炭谷銀仁朗捕手(現楽天)のFA人的補償として、西武に移籍した。西武では3年間でわずか2勝(2敗)だが、「球団、ファンの方々に、内海がライオンズにいてよかったと思ってもらえる存在でありたい」と語ったベテラン左腕。その存在価値は多岐に渡る。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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