現役引退を発表 V長崎・FW玉田圭司 「やりたい」で駆け抜けた23年間 背番号11に「11」の質問

「スパッとやめたいとずっと考えていた」と語る玉田=長崎新聞社

 サッカー元日本代表のFW玉田圭司(41)が5日、現役最後の試合に臨む。まだ十分に通用する力がある中、なぜいま引退を決断したのか。引退後はどんな道に進むのか。そして最後の地・長崎への思いも…。11月11日11時11分に引退を発表したV・ファーレン長崎の背番号11が「11」項目の質問に答えた。

1 今でも試合に出たら別格の存在感を発揮している。誰もが驚く突然の引退発表だった。

 「何でもうやめちゃうの」っていろんな人に言われるし、自分自身「まだやれる」と思っている。だけど、それを披露できる場所がない。モチベーションが続かず、そんな姿を見せたくなかった。他クラブでやりたい気持ちにも、正直ならなかった。周りから「やめた方がいいよ」と言われる前に、スパッとやめたいとはずっと考えていた。
 今年の最初に妻と軽くそういう話をして。「ちょっと考えたいんだよね」って程度だったけど、夏くらいから徐々にそっちに傾いて。11月に入ったくらいに決意した。

2 サッカーを楽しむことにこだわった。

 もちろん仕事だけど、それを抜きにしてもやりたいって気持ちがないと続かない。僕自身、試合の最中に「仕事」って頭をよぎった時は、まったくと言っていいほどいいプレーが出なかった。心からその時間を楽しめている時は、自分でも考えられないくらい、いいプレーができる。他の仕事でもそうかもしれないが、どんな時も笑顔を出すと周りも笑顔でいてくれるだろうし、それが広がっていろんな面でいい効果が出るんじゃないかなって思ったりする。

3 ワールドカップ(W杯)に2度出場、名古屋にJ1初優勝をもたらした。23年のプロ生活を振り返って。

 性格的に負けず嫌いで完璧主義者なところがある。追い求めて、追い求めて、それでも追い求めてやってきた。だから実は一度も満足したことはない。どちらかといえば苦しい時期の方が多かった。名古屋を2回クビになったし、今季試合に出られていないのもそう。でも、だからこそ長くやれてきたのかもしれない。悔しい中でいくつか成功体験があって、また喜びを味わいたいという思いでやってきた。

4 最後の3年間はV長崎で過ごした。

 最初なんて特に戸惑いが大きくて。C大阪や名古屋はJ2の時もJ1の感覚でやれたけど、長崎で「ああ、J2に来たんだ」と思い知らされた。いてほしい場所に仲間がいなくて、アドバイスしたところで伝わらない部分も多々あって、正直難しいなって思った。でも、じれずに言い続けたり、いい選手が来てくれたこともあって、2年目の途中からは積み上げを実感できてきた。
 ただ、長崎は本当にこれからのクラブ。「J1に上がれるかも」くらいまでは来たけれど、まだローカル感は否めない。もう一歩サッカーの質を高めればサポーターの目が肥えるし「長崎のサッカー面白いな、見に行こう」ってなる。質の部分を変えていけば見える世界が変わるし、未来につながる。すぐには無理でも、少しずつ土台を築いて「長崎はこれ」という形があれば、いい方向に行くんじゃないかな。

5 W杯でブラジルから先制点を決めた。名古屋がJ1優勝を決めた試合では決勝点。「記憶に残るゴール」が多い。自身にとって特別なゴールは。

 やっぱりブラジル戦のゴール。あれで僕のことを知ってくれている人は多い。結果は散々(1-4)だったけれど、自分にとっていい思い出。
 V長崎での初ゴール(2019年4月7日、ホーム山口戦)は今でも覚えている。あそこからすべて始まったのかなと思っている。

6 対戦して手ごわかったDFは。また、尊敬していたFWは。

 DFは柏レイソル時代の8歳上の先輩、薩川(了洋)さんかな。自分がまだ20歳くらいで試合に出られていない時代からかわいがってくれた。お互いに1対1が好きで、紅白戦でよく勝負した。
 FWは代表で一緒にやった久保竜彦さん。破天荒というか、僕にはまねできないタイプですごく面白い選手だった。

7 同年代の引退が相次いでいる。

 代表で一緒にやった(中村)憲剛とか、まだ続けているけどヤットさん(遠藤保仁)とか。一緒のクラブでやりたかった選手はたくさんいる。一緒にやれれば僕も、もっと成長できたんじゃないかって思う。でも、これも僕の人生。これからもみんなさまざまな形でサッカー界に携わっていくと思うので、これから僕らの年代で盛り上げていければいい。

8 セカンドキャリアについて。

 指導者に興味がある。今、B級ライセンスを持っていて、いけるならS級まで取りたい。そっちの才能があるかは分からないけれど、いろんなことにトライしたい。

9 J1通算99点。100ゴールへの未練は。

 まったくない。本当に全然。まあ、長崎が何年後かに昇格したら1年契約で戻ってこようかな。冗談ですよ(笑)

10 長崎での生活はどうだったか。

 柏、名古屋、大阪とある程度栄えた場所ばかりいたので、まず物件探しから一苦労だった。最初はサッカーも含めて戸惑いだらけだったけれど、サッカー以外の方たちとも交流が生まれて、そこからつながったものもある。本当に来て良かった。濃い3年間だったな。

11 アウェー松本戦は5日午後1時キックオフ。いよいよ最後の試合。どんなプレーを見せたいか。

 最後だからこうとかは特にない。今まで通りの自分を貫いて、その中で何かを与えられたらいい。何かを伝えられたら、それでいい。

2019年、V長崎に加入後初ゴール。この試合、2ゴールを奪った=トラスタ

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