レコード更新PP獲得のモスタート組がグレートレース完全制覇/RSC最終戦バサースト1000

 10月末から4週にわたって開催されてきたシドニーでの“Quadruple-Header(クワドラブル・ヘッダー)”を経て、迎えた2021年RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ最終戦『バサースト1000』が、12月5日に“聖地”マウントパノラマで開催された。そのシーズンフィナーレでは、ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド(WAU)のチャズ・モスタート/リー・ホールズワース組(ホールデン・コモドアZB)が波乱を乗り越えてのグレートレース完全制覇を達成。モスタートにとっては直前に戴冠を決めたTCRオーストラリアのチャンピオンに加え、2度目のバサースト1000ウイナーの称号を手にした。

 シリーズ史上初の12月開催となった2021年の『バサースト1000』は、合計10のカテゴリーを含む大規模な6日間イベントの一環として、11月30日から12月5日の期間に組み込まれるかたちとなった。その会期中となる12月3日(金)には、2023年へと導入が1年延期されたGen3規定『フォード・マスタング・スーパーカー』と『シボレー・カマロZL1スーパーカー』がファンの前で初公開されるなど、ファイナルに向け現地のボルテージは高まる一方に。

 チャンピオンシップ争い自体は前戦のシドニー4連戦最後の週末が豪雨によるレースキャンセルとなったことも併せ、開幕から年間14勝と破竹の快進撃を続けてきた2016年王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/レッドブル・アンポル・レーシング)が自身2度目のドライバーズチャンピオンを確定。この週末は、シリーズの魂とも言うべきマウントパノラマで『勝者の称号を得る』という純粋な栄誉に向けた勝負が繰り広げられた。

 そんな長距離イベントに向け、耐久カップ登録コドライバー用のプラクティスを含めて都合4度実施された公式練習では、フォード・マスタング勢に対しホールデン・コモドアZBが優位を保つ展開になり、最初の予選ではシドニーでRSC初勝利を飾ったばかりの初代TCRオーストラリア王者、ウィル・ブラウン(ホールデン・コモドアZB/エレバス・モータースポーツ)が0.02秒差で暫定ポールポジションを獲得する。

 一方でこれがフルタイムドライバーとして最後の1戦となる7冠王者ジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/レッドブル・アンポル・レーシング)は、トップ10シュートアウト進出を逃す苦しい展開となった。

 その最速ドライバー決定セッションでは合計5名のドライバーが2分04秒台を切るハイレベルな争いとなり、最終的にWAUのエースであるモスタートが2分03秒373を記録。このタイムは2019年にスコット・マクラフランの記録した2分03秒481を上回り、マウントパノラマで記録されたスーパーカーのラップとしては史上最速となり、ディック・ジョンソン・レーシング(DJR)のアントン・デ・パスカーレ(フォード・マスタング/シェルVパワー・レーシング)やキャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング/ティックフォード・レーシング)らを退け、モスタート/ホールズワース組がコースレコード更新でのポールポジション獲得となった。

週末最初の予選では初代TCRオーストラリア王者、ウィル・ブラウン(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)が0.02秒差で暫定ポールポジションを獲得
トップ10シュートアウトではチャズ・モスタート/リー・ホールズワース組(ホールデン・コモドアZB)がコースレコード更新のポールポジション獲得となった
決勝スタートは、Dick Johnson Racing(ディック・ジョンソン・レーシング/DJR)のアントン・デ・パスカーレ(フォード・マスタング/Shell V-Power Racing)とペアを組むトニー・ダルベルトがホールショットを奪う展開に
キャメロン・ウォーターズ(フォード・マスタング/Tickford Racing)もライバルの脱落に乗じて、一時は首位に浮上する
予選トップ10入りを逃した7冠王者ジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/Red Bull Ampol Racing)組は決勝の巻き返しで4位フィニッシュ

■首位快走中にまさかのトレッド剥離

 日曜現地時間12時15分にスタートが切られた今季最後の決勝は、フィールドのほとんどがコドライバーにファーストスティントを託すかたちで始まると、まずはパスカーレとペアを組むトニー・ダルベルトがホールショットを奪う展開に。

 しかし冷静にライバルの動きを見極めたポールシッターのホールズワースは、オープニングラップの山側セクションですぐさま首位を奪還。背後にはSVGと強力タッグを組むガース・タンダーが続く展開となる。

 その後、序盤戦は静かな展開で推移していくも、波乱が巻き起こったのはレース開始2時間が経過した頃。首位のバトンを引き継いでいたモスタートは、2番手ウォーターズに対して13秒程度のマージンを構築したが、次のルーティンピットに向かおうとしたその直前、49周目の“山頂”を通過した際に左のリヤタイヤがトレッド剥離を引き起こし、まさかのスローダウン。ウォーターズ/ジェームス・モファット組のマスタングに首位を明け渡すこととなる。

 レース中間の折り返し地点では今季チームタイトル確定済みのトリプルエイト・レースエンジニアリング888号車SVG/タンダー組が隊列を率いると、25号車モスタート/ホールズワース組は一時30秒近く背負ったビハインドを挽回すべく猛チャージをみせる。そして4時間経過で2度目のセーフティカー(SC)が出たことを機にギャップが消えると、タイヤトラブルを克服して首位奪還を成し遂げる。

 その後、都合4回のSC出動でもリスタートを制した25号車が、ウォーターズ/モファット組に3.3795秒差のマージンを持って161周を走破。タイヤ剥離の波乱も乗り越え、モスタートは2014年以来となるバサースト2勝目、ホールズワースは出走18回目にして初の栄冠を手にした。

「本当にかなりタフなレースだった。僕らがパンクを喫したときにはまず『今日はツラい仕事になりそうだ』と思った。でもみんなのお陰で、このクルマは週末を通じて一貫したスピードを発揮してくれたんだ」と、喜びを語ったモスタート。

「僕らはポールでスタートし、レースに勝った。ポールでスタートするたび勝てるとは思わないが、それこそがクルマへの信頼であり、チームへの信用でもあるんだ。そして熱狂的ファンがトラックに戻ってくるのはとても良いことだ、息切れするほど全力で走ったよ」

 2位ウォーターズ/モファット組に続き、3位にはブロディ・コステッキ/デビッド・ラッセル組(ホールデン・コモドアZB/エレバス・モータースポーツ)が並ぶ表彰台となり、現役ラストランのウインカップ/クレイグ・ラウンズ組が巻き返しの4位に。そして終始、レースリーダーを脅かし続けたSVG/タンダー組は中盤にダッシュパネルの表示に不具合を抱えたのち、最後はタイヤトラブルにより下位に沈むなど、新チャンピオンには苦い最終戦結果となっている。

DJRのもう1台、ウィル&アレックスのデイビソン兄弟組(フォード・マスタング/Shell V-Power Racing)はピットでのダブルスタックに泣く
レースリーダーを脅かし続けた新王者シェーン-ヴァン・ギズバーゲン(ホールデン・コモドアZB/Red Bull Ampol Racing)組(背後)は、トラブルに沈む結果に
暫定ポールのウィル・ブラウン(ホールデン・コモドアZB/Erebus Motorsport)組はパワーステアリングトラブルに見舞われた
「信じられない、なんて言ったらいいのか分からないほどだ。このチームは最高だよ」と、悲願のマウントパノラマ初制覇を達成したリー・ホールズワース(左)
今季限りで引退表明の7冠王者ジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB/Red Bull Ampol Racing)は殿堂入りが発表された

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