RSC導入1年延期の“Gen3”フォード・マスタングがシェイクダウン「このクルマは何も失望させない」

 オーストラリア大陸最大のツーリングカー選手権、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップへの投入に向け、着々と開発作業が進められている新車両規定“Gen3”採用の『フォード・マスタング・スーパーカー』が、11月10日にクイーンズランド・レースウェイで最初の周回を完了。本来2022年の本格導入に向け準備が進められながら、この10月にも「プログラムの導入を2023年のオープニングイベントに延期する」という苦渋の決断が下されるなか、まずはデビューに向け最初の1歩となるシェイクダウンを終えている。

 フォードのホモロゲーションチームであるディック・ジョンソン・レーシング(DJR)によって開発されたマスタングは、そのDJRが運営するシェルVパワー・レーシングの耐久カップ登録ドライバーとして、今季はシーズン最終戦となる『バサースト1000』にも参戦予定のアレックス・デイビソンのドライブで、非公開プライベートテストに臨んだ。

 このGen3規定車両として登場予定の『フォード・マスタング・スーパーカー』と『シボレー・カマロZL1』は、12月初開催となるマウントパノラマでの2021年大会、第64回“グレートレース”の現地12月3日金曜にファンの前で正式お披露目されることも決まっており、その公開を前にまずはマスタングが記念すべき“ファーストラップ”を済ませた形だ。

 ホールデン陣営(2023年からはシボレー陣営)代表トリプルエイト・レースエンジニアリングを含め、ここ数週間で開発作業が進捗を見せるGen3マシンたちだが、10月には同じクイーンズランドでGM(ゼネラル・モータース)製ブロックを使用した『シボレー・カマロZL1』用のエンジンがテスト用のミュールカーに搭載され初走行し、こちらも肯定的なテスト結果を得ている。

 現状プロトタイプのV8エンジンと同時に空力パッケージの開発も進められ、新型ホイールの生産も始まったGen3プログラムは、従来より以上に「紛れもなく」ロードカーとの相関を持つディメンションを採用。市販車と限りなく近いスタイリングを特徴とするよう設定されており、同時に直近のエアロテストにより、新しいボディパッケージが「より優れたパフォーマンスを発揮する」ことも証明されたという。

この10月にも「プログラムの導入を2023年のオープニングイベントに延期する」という苦渋の決断が下されたGen3規定
フォードのホモロゲーションチームであるDick Johnson Racing(ディック・ジョンソン・レーシング/DJR)によって開発中のGen3マスタング
2023年からTriple Eight Race Engineering(トリプルエイト・レースエンジニアリング)が投入する『シボレー・カマロZL1』も製作が進む

■走行データは“ライブテレメトリ”としてストリーミングによるデータ共有が行われる

 今回のテストでシリーズの技術部門とモータースポーツ部門は、前者がピットレーンから、後者は同部門が現在拠点を構えているシドニーのオフィスからリモートで現場を監督し、テストの終日にわたりライブストリーミングによるデータ共有が行われた。

 この日、マスタングが初めてオントラックテストを実施したその走行データは、ライブテレメトリとして両方のグループに送信され、スーパーカーのモータースポーツ部門責任者を務めるエイドリアン・バージェスは、まずは成功裡に終わったテストの成果を踏まえ「Gen3にとって歴史的な日になった」と振り返った。

「スーパーカーに携わるメンバー全員、そしてこの地点に到達するために、たゆまぬ努力を続けてきた“Gen3”ステアリング・コミッティの面々にとって、この日は間違いなくエキサイティングな1日になった」と語ったバージェス。

「ウォーミングアップから順調に進み、現状はまだ持てるパフォーマンスをフルに稼働させるフェイズではないが、様子を見ながらライブテレメトリを活用し、多くの技術的な課題に取り組み、確認したいと考えていた重要な項目に焦点を当てることができた」

「今日の走行から取得できるデータは数多くあり、次回までに分析を進めていく予定だが、状況がどのように進んだかを考えるとこの成果には満足しているし、バサーストでクルマが公開される日が本当に待ち遠しいね」

 そのバージェスは今回のテスト結果に「勇気付けられた」とも語り、この第一歩が長い旅の始まりであり、さらに多くのハードワークが待ち構えるものの、スーパーカーとファンにとっても「特別な日になった」と続けた。

「今日、我々が見聞きしたことは爽快だった。数週間後にGen3を発表すれば、特別な何かを求めているファンは『感じるもの』があるだろうね。ルックスの重要性もさることながら、そのインサイドに『何が入っているか』を知ることは非常にエキサイティングだ。これらのクルマは何も失望させないはずだ」

より軽量で安価、かつ高い耐久性を両立したというGen3規定用共通パイプフレームシャシー
全高の100mm削減、全幅の100mm拡幅などで、現行車両より“ロー&ワイド”なルックスに進化
オントラックテストを実施したその走行データは、終日にわたりライブストリーミングによるデータ共有が行われた

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