新庄監督の申し出を“敢えて辞退” ソフト新リーグに求められる「お、ねだん以上。」

リーグを象徴する「Wow!ポーズ」を決める藤田、上野、後藤、切石(左から)【写真:宮脇広久】

島田利正チェアマン「プロ野球ファンもターゲット」

日本女子ソフトボール機構は7日に都内で会見し、新リーグ「JDリーグ」の開幕戦を来年3月28日にZOZOマリンスタジアムで開催すると発表した。月曜夜の“マンデー・ナイター”として、ビックカメラ高崎とトヨタ自動車の“2強”がいきなり対戦。JDリーグの島田利正チェアマンは「我々は野球ファンもターゲットにする。プロ野球の試合のない月曜日に、観客として引き込みたい」と収益化へ向けて踏み出した。

会見にはビックカメラ高崎の上野由岐子投手、藤田倭投手、トヨタ自動車の後藤希友投手ら今夏の東京五輪で金メダル獲得の原動力となった顔ぶれが揃った。両チームは11月7日、前身の日本女子リーグの決勝トーナメント・決勝でも対戦し、ビックカメラ高崎が3連覇を達成している。島田チェアマンは「開幕戦には一番注目されるカードを持ってきました。東京五輪で金メダルを獲得したことによる盛り上がりを、無駄にしてはいけない」と説明した。

JDリーグは1968年以降、54年間の歴史を持つ日本女子リーグを改組。東西2地区制で8チームずつ、計16チームのリーグに生まれ変わった。初年度の2022年は、東西交流戦を含め1チームにつき年間29試合。その後、両地区の1~3位までと、4位のうち勝率上位(ワイルドカード)の計7チームによるトーナメント方式のポストシーズンを行い、年間チャンピオンを決める。ビックカメラ高崎は東地区、トヨタ自動車は西地区に配置された。

開幕戦以外の日程は未発表。島田チェアマンは「初年度は10試合未満になってしまうとは思うが、月曜夜の試合を数多く組んでいきたい」と強調する。「野球に限らず、月曜日に開催されるスポーツは少ない。その分、スポーツ紙などの扱いが大きくなるのではないか」と計算しているからだ。そこには「選手は従来通り実業団チームの所属だが、われわれ(リーグ事務局)は興行ビジネスのプロに徹する」というプライドがある。

上野、島田チェアマン、タイトルパートナーの似鳥昭雄会長、後藤(前列左から)【写真:宮脇広久】

新庄ビッグボスから「恩返しでソフトボールのために何かやりたい」と申し出

実は、島田チェアマンは2018年に定年退職するまで、プロ野球・日本ハムでチーム統括本部長、球団代表などフロントの要職を歴任。いま球界を席捲している“ビッグボス”こと日本ハム・新庄剛志監督とは、現役時代から親交が厚い。その新指揮官から最近「恩返しでソフトボールのために何かやりたい」とありがたい申し出を受けた。実際、日本ハムの来季の日程によると、3月28日は移動日に当たっており、開幕戦来場も可能かもしれない。

しかし、島田チェアマンは「凄くうれしかったけれど、我々の中でいろいろ考えた結果、今ビッグボスにやってもらうと全部持っていかれる。しばらくして、(新庄フィーバーが)収まってからにしようということになった」とあえて当面辞退。他力本願で一瞬だけ注目されても意味はない。足元を見据え、新リーグの知名度と収益力を着実に上げていくつもりなのだ。

リーグの「タイトルパートナー」(冠スポンサー)には、家具・インテリア用品大手の「ニトリ」が3年契約で就いた。会見に同席した同社の似鳥昭雄会長は「東京五輪でソフトボール日本代表の戦いぶりには興奮した。新リーグにはメジャーになれる可能性があると思う」と語る。同社は日本ハム球団のオフィシャルスポンサーも務めているとあって、「新庄さんみたいな選手、監督が出てきたら面白い。わが社は『お、ねだん以上。』を掲げているだけに、プレーにプラスアルファが欲しいね」と要望。「失敗を恐れず新しいことをやりたい。多少お金がかかっても、やる価値のあることなら協力したい」と請け合った。

島田チェアマンは「試合のネット配信も予定していますが、メーンは観客動員」と明言。「現時点では、来年のコロナ禍の状況が未知数で、初年度は収容人数が3000人に満たない球場も使用するなど、ネックはある。それでも、できる限り多くのお客さんに見ていただけるよう努める」と語気を強めた。まずは3年の間に、新リーグを軌道に乗せることができるか手腕が注目される。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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