「甲子園出場」と「東大合格」を果たした球児の“共通点”は? 野球部前監督の分析

東大野球部の監督を務めた浜田一志氏【写真:高木希】

甲子園出場を経験した東大野球部員2人には共通点があるという

2013年から2019年まで東大野球部監督を務め、プロ野球に進んだ宮台康平投手(ヤクルト)も指導した浜田一志氏には、部活と勉強の両立を目指す学習塾「Ai西武学院」の塾長という顔もある。少年野球指導のヒントとなる考え方を紹介するFirst-Pitchの企画「ひきだすヒミツ」では、浜田氏の連載第4回として甲子園出場経験のある東大野球部員に見られる“共通点”を聞いた。

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東大野球部100余年の歴史の中で、甲子園出場経験者は24人います。だからだいたい4年に1人くらいは入ってくるんです。現在も静岡と東筑(福岡)出身の甲子園経験者が2人在籍していますが、彼らの出身高校に共通するのはスポーツ推薦枠、学校裁量性などの生徒と、一般受験の生徒が同じクラスで勉強しているということです。2人はともに一般受験で高校に入学しています。

甲子園に出て、東大にも合格するには、そういう環境であることは必須の条件といえるでしょう。人間というのはある程度自分にレッテルを貼るので、開成に入った子は自分が甲子園に行けると思っていないし、偏差値30の高校に入ったら東大なんて「無理だ」と思ってしまいます。

一方で同じクラスに甲子園を目指す生徒と、東大を目指す生徒が一緒にいると、お互いのレッテルを剥がしあう。「勉強組」が「野球組」に交じってレギュラーになっちゃったり、「野球組」の学力が急に上がったりすると、自分もやればできるんじゃないかと思うようになるんですね。

あと「野球組」が「勉強組」に野球を教えたり、「勉強組」が「野球組」に勉強を教えたりして双方がレベルアップするという相乗効果も期待できる。人に教えることで、自分が成長するというのもありますし、お互いに教えあう環境というのはすごく大事ですよね。

東大野球部は2014年から沖縄で合宿を実施している

甲子園や東大を目指す動機というのは、実際に実現した先輩や、同じように目指している同級生が身近にいたほうが抱きやすい。

これは一つの例ですが、沖縄県出身の東大野球部員というのは創部以来、ずっといなかったんです。沖縄は高校野球の強豪県ですし、身体能力が高い子も多いので、私は是非とも沖縄県から入部者を出したかった。

それで2014年から沖縄で東大野球部の合宿をすることにしたんです。練習の合間に野球部員が高校で勉強を教えるなどして「一緒に東大で野球をやろう」と声を掛けて回りました。

そうしたら2019年にその中から合格者が出て、東大野球部に入ってきた。それからは3年連続で沖縄から入部者が出ています。100年ゼロだったのに、1人入ったら3年続くっていうのは、やはり沖縄の高校生にとって東大野球部が身近に感じられるようになったということでしょう。合宿に行ったことが一つのきっかけになったと思っています。

○プロフィール
浜田一志(はまだ・かずし)1964年9月11日生まれ、高知県出身。土佐高校で野球部に所属し、東大理科二類に現役合格。野球部に入部し、4年時に主将を務めた。東大工学系大学院を修了後、会社員を経て1994年に文武両道を目指す学習塾Ai西武学院を開業。2013年から2019年まで東大野球部監督を務めた。(石川哲也 / Tetsuya Ishikawa)

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