京大野球部は「弱者じゃない」 元ホークス・近田新監督が期待する“秀才軍団”

京大の監督に就任した近田玲王氏【写真:橋本健吾】

元ソフトバンクの近田玲王氏が京大の監督に就任「戦力の差は意外と無い」

元ソフトバンクの近田玲王氏が関西学生野球リーグに所属する京大の監督に就任した。高校、大学、社会人、プロ野球と全てのカテゴリーを知る青年監督はこれまでの常識を取っ払い“野球変革”に挑戦していく。

近田氏は報徳学園ではエース左腕として甲子園に3度出場し、2008年夏には8強入り。同年ドラフトで3位指名を受けソフトバンクに入団も、1軍出場がないまま2012年オフに戦力外通告を受けた。その後はJR西日本でプレーを続け、2017年から京大でコーチ、昨年9月から助監督を務めていた。

正式に監督としてスタートを切り「京大はリーグの中では“弱者”と見られがちですが僕はそうじゃないと思う。このチームに来た時から戦力の差は意外と無いなと感じていた」と語る。

関西学生野球リーグで対戦する関大、関学、立命大、同大、近大は高校時代に実績を残した、いわゆる“甲子園組”が毎年のように入学している。チームの指導を始めた当初は「負けて当然という雰囲気があった。でも、選手たちは勝ち飢えていたので『力を出せば勝てるんだよ』と、意識を変えることからスタートしました」と振り返る。

野球の技術、身体能力など他大学と比べれば大きな差があったが「まだ野球の細かい部分では荒さがあったので付け入る隙はある」と感じたという。大阪桐蔭、明徳義塾など、出身校が入ったメンバー表を見るだけで戦意を喪失していたナインに向け「自分たちに集中しよう。メンバー表を見るな。だから勝てないんだ」と、意識改革を植え付けていった。

「これまであった常識を覆して、モデルケースを」

昔ながらの練習方法も京大ナインには通じない。グラウンド100周、千本ノックなど根拠が見えないトレーニングには興味を示さなかった。

「僕も昔は何のために走ってるんだ? と思いながらやっていた。全ての練習がどこに繋がっていくかを分かっていないと意味がない。最低限の基礎は教えていくが、色々な視点から選手の成長をみていきたい」

早くからラプソードなどを用いて科学的に投球を分析。外部指導者も積極的に招聘し、最近ではパドレスのダルビッシュ有投手も認める「プロウト(プロの素人)」と呼ばれるお股ニキ氏らにも指導を仰いだ。また、来季からは野球未経験ながらデータに特化した部員をアナライザーの役職(主務兼務)に付けベンチ入りさせることも決まっている。

「ある意味、優勝を義務づけられていない京大だからこそできる部分がある。昔の僕の考えをいい意味で壊してほしいですね。これまであった常識を覆して、モデルケースを作っていければ野球界も変わっていく」

今秋のリーグ戦では水口創太(3年)が京大史上最速となる152キロをマークし、一躍来年のドラフト候補に名を連ねるなど注目を浴びている。チームの最高成績は2019年秋シーズンに記録した4位。強豪ひしめく関西学生野球リーグで近田新監督がどのような手腕を発揮するのか、今後も注目が集まる。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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