速読は「野球のトレーニングにもなる」 東大野球部前監督が勧める理由とは

東大野球部の監督を務めた浜田一志氏【写真:高木希】

速読は「野球のトレーニングにもなる」 東大野球部前監督が勧める理由とは

2013年から2019年まで東大野球部の監督を務めた浜田一志氏は、部活と勉強の両立を目指す学習塾「Ai西武学院」の塾長も務める。少年野球指導のヒントになる考え方を紹介するFirst-Pitchの企画「ひきだすヒミツ」は浜田氏の連載第5回として、東大野球部で取り入れているトレーニング法について聞いた。プロ野球に進んだ宮台康平投手(ヤクルト)も生んだ“文武両道最高峰”の野球部では、部員の豊富な知識がトレーニングに活かされている。

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野球では、身体の強さでプレーしている選手と、眼の良さでプレーしている選手がいます。東大野球部は圧倒的に眼の良さでプレーしている選手が多いです。

選手の動体視力を測ったこともあります。信号機が赤から青になったらバットを振るというルールで、始動までの反応時間と、始動してからのスイングスピードを測定したんです。そうしたらスイングスピードと比較して、始動までの反応時間がすごく速い。動体視力が良いんですね。

動体視力は間違いなく野球の技術とリンクしています。そうでなければ高校時代に120キロでプレーしていた子たちが、東京六大学の140~150キロの球速にすぐ対応できるようにはならないですよ。

さらに、眼のトレーニングも取り入れていました。顔を動かさずに、両手の人差し指の先を眼だけで追う。これで眼の筋肉や動体視力が鍛えられるんです。試合前、練習前、フリーバッティングの直前などに左右10回、上下10回を交互に4セット、合計40回やっていました。

東大野球部員がなぜ動体視力が良いのか考えたんですが、東大生は本をたくさん読んできて、読むのも速い。字をパッと捉える能力が鍛えられてるんじゃないかなと思うんです。あくまで仮説ですが、速読は勉強しながら、野球のトレーニングにもなる。文武両道を目指すなら手軽にできますし、お勧めしたいですね。

監督在任中に言い続けた「勝ちたければ、飯を食え」

東大野球部には学生アナリストもいますし、データ分析はお手の物ではあるんです。以前、慶大がトラッキングシステム「ラプソード」で計測した投球の回転数のデータをもとに投手陣を整備したことが話題になりましたが、東大でもそういう知識はあるんです。

プロ野球のドラフトにかかるレベルが2000回転、六大学の平均が1800回転、東大の平均は1500回転というようなデータは持っている。でも多くの部員が回転数を上げるための筋力がない状態で入学してくるので、分かっていてもそこに行きつかないんですね。

私の監督在任中は「勝ちたければ、飯を食え」と言い続けました。食え、食えとあまりに言うとパワハラになりかねないので、ざっくり1日4000~5000キロカロリー摂るようにとだけ伝えました。そうすると皆、考えることは好きなので、いつ何をどのくらい食べなきゃならないか、いろいろとアイデアが出てくる。プロテインなんかは化学式まで書いて、夜飲むにはこっち、練習前はこっちなんてやっていましたよ。

彼らは筋力を鍛えたらボールが飛ぶようになるとか、仕組みを理解する能力は高い。限られた時間で何を優先してやるべきかを見極める能力も高い。目標が定まったら、そこに向かって努力を続ける才能がある。しかも一時的に頑張るのではなくて、モチベーションを上げたら保ち続けることができる。これは受験勉強をしてきた効果であって、東大野球部の強みといえるでしょうね。

○浜田一志(はまだ・かずし)1964年9月11日生まれ、高知県出身。土佐高校で野球部に所属し、東大理科二類に現役合格。野球部に入部し、4年時に主将を務めた。東大工学系大学院を修了後、会社員を経て1994年に文武両道を目指す学習塾Ai西武学院を開業。2013年から2019年まで東大野球部監督を務めた。(石川哲也 / Tetsuya Ishikawa)

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