2021年で真の“勝負強かった打者”は? 打撃指標でも群を抜く広島・鈴木誠也

広島・鈴木誠也【写真:荒川祐史】

指標「WPA」のトップは鈴木誠、2位はレアードに

ヤクルトが日本一に輝いた今季のプロ野球。多くの感動を読んだ2021年シーズンで大事な局面でより結果を出してきた“勝負強い”打者は誰だったのか。野球を科学的に分析するセイバーメトリクスの指標で見てみよう。

セイバーメトリクスの指標には「WPA」というものがある。これは、各選手がどれだけ勝利期待値を増減させたかによって貢献度を評価するもので、勝敗の分かれ目となる重要な局面での結果がより高く評価され、勝負がほぼ決した状況での適時打や本塁打などの評価は高くない。この「WPA」を用いて、チームの勝利により貢献した“勝負強い打者”を見てみたい。なお、このデータはセイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTAのものを参照した。

今季12球団で最もチームの勝利期待値を増やしたのは広島の鈴木誠也だ。WPAは5.91で頭抜けている。従来、“勝負強さ”の参考とされてきた得点圏打率は.295とリーグで9番目だったが、やはり重要な局面で結果を残し、チームの勝利に大きく貢献していたことが分かる。

2位はロッテのレアードで4.60、3位はヤクルトの村上宗隆で4.54、4位はソフトバンクの柳田悠岐で4.42、5位はオリックスの杉本裕太郎で4.26と続いていく。チャンスで打席に立つ機会の多い選手が数字が高くなる側面はあるものの、得点圏打率は.400で12球団トップだったオリックスの吉田正尚は両リーグ通じて10位になる。

指標「Clutch」では12球団トップは中日の京田に

“勝負強さ”と言うと、重要な局面で、普段以上の力を発揮できる選手というイメージも思い浮かぶ。セイバーメトリクスには「Clutch」という指標もあり、これは選手個々において、通常の局面に比べて重要な局面でどれだけ働いたかを示す。打率2割の選手が好機で結果を残せば、プラスになり、打率4割の選手でも重要な局面で凡退が続くとマイナスになる。

今季、400打席以上立った打者で最もこの「Clutch」が高かったのは中日の京田陽太だ。1.82を記録し、2位以下に0.3以上の差をつけている。京田は今季打率.257で得点圏打率も.244と高くない。だが、指標の上では通常の局面よりも、重要度の高い局面で打っていたということだ。

2位は京田のチームメートである中日のビシエドが入り、ロッテのレアード、西武の栗山巧、阪神の近本光司、ソフトバンクの甲斐拓也と続く。レアードは「WPA」でも上位に位置しており、重要な局面でより結果を残し、勝利期待値の増加に大きく貢献していたということだろう。

なお、「WPA」で1位だった鈴木誠は「Clutch」では-0.17となり、これは通常の局面でも重要な局面でも、その働きはほぼ変わらないことを示している。ヤクルトの村上宗隆は-2.15となっている。なお、この「Clutch」はシーズンを跨いでの一貫性はほとんどないと考えられている。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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