60歳までにセミリタイアして国内外でロングステイを楽しみたい夫婦。希望は叶う?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、30代のご夫婦。60歳までにセミリタイアをして、国内外でロングステイを楽しみながら暮らしたいという相談者。現在の家計状況で実現可能でしょうか? マネープランの立て方は? FPの飯田道子氏がお答えします。


30代の共働き夫婦です。子どもはいません。

60歳までにセミリタイアをして、数か月単位で場所を変えながら国内外で暮らしたいと考えていますが、今の家計状況で、どうすれば実現できるでしょうか。

【相談者プロフィール】

・相談者:女性、38歳、公務員

・夫:38歳、製造業(大企業の部類)、月収33万円、ボーナス100万円

・介護予定なし

・住居の形態:持ち家(戸建て・中部地方)

・毎月の世帯の手取り金額:52万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:340万円

・毎月の世帯の支出の目安:30万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万円

・食費:6万円

・水道光熱費:1万5,000円

・保険料:5万円

・通信費:6,000円

・車両費:5,000円

・お小遣い:5万円

・その他:5万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円

・iDeCo、つみたてNISA満額投資済

・ボーナスからの年間貯蓄額:140万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):2,300万円

・現在の投資総額:100万円

・現在の負債総額:住宅ローン残債2,000万円(35年ローン7年目。金利0.6%)

・退職金:夫/おそらくあり(金額不明)、妻/あり(900万)

飯田:今回の相談者様は38歳の公務員で、同い年の夫とともに60歳までにセミリタイアをして、数カ月単位で場所を変えながら、国内外で暮らしたいという希望をお持ちです。現状、夫婦2人のみの暮らしであり、住いは持ち家であるものの、住宅ローンの残債が2,000万円残っています。相談者様の場合、どのような点に気を付けて準備をするべきか、また、そもそも実現できるのかについて考えていきます。

日々のお金の流れを確認する

将来、現在の住まいをベースにして国内外で暮らす場合、まず考えておくべきことは、お金の流れがどのようになっているのか? そこに無駄がないか? を確認することです。

頂いたデータからお金の流れを確認してみましたが、金額として埋まっている箇所については、一般的な支出と思えますので、問題はなさそうです。ただし、iDeCoやつみたてNISAの項目については、「満額投資済」とのみ書かれています。そうなると、毎月の収入が52万円、毎月の支出額30万円、貯蓄額10万円となっていますので、12万円の行方がどのようになっているのかが不明です。

もちろん、相談者様では、お金の使い道を把握されていると思われますが、12万円の使い道を決めておかないと、貯蓄に気持ちが向かずに、何となく使ってしまって手元にないということが考えられます。まとまったお金でもありますので、お金の流れを明確に示しておくと良いでしょう。

現状を維持できれば60歳リタイアも可能?

ひとまず、仮に60歳でリタイアし、セカンドライフを迎えると考えて、話を進めていきます。

現在の貯金総額は、2,300万円。60歳までの22年間、毎月の貯蓄額の10万円を継続すれば、2,640万円貯めることができます。ボーナスも今までのペースで年間140万円を貯蓄に回せば、22年間で3,080万円貯めることができます。

夫婦60歳時点の貯蓄は、現在の貯金2,300万円+毎月の貯蓄2,640万円+ボーナス分3,080万円となり、8,020万円手元にある計算です。

住宅ローンの残債は残りの返済期間28年、残高は2,000万円となっていますが、先ほどの不明確な流れとなっている12万円を繰り上げ返済の原資にすれば、60歳までには完済できると考えられます。

その他、相談者様の退職金900万円がありますので、60歳の時点で、少なくとも9,000万円弱のお金が手元にあり、その他に夫の退職金、iDeCoやNISAがあることが考えられます。現状の生活を維持していれば、60歳からセカンドライフをスタートしても良さそうですし、滞在先にもよりますが、国内外で暮らすことも実現可能であると考えられます。

未確定なお金を明確にする

また、年金の受給は夫婦ともに65歳からですので、60歳からの5年間は預貯金から切り崩すことになります。

今のように毎月30万円支出する生活を送る場合には、年間360万円、旅行資金を加味して年間500万円支出がある場合には、5年間で、2,500万円支出することになります。

厚生労働省が発表する「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、年金の平均受給額は、国民年金がおよそ5.6万円、厚生年金がおよそ14.4万円となっています。夫婦それぞれが同額の年金を受け取ると仮定すると、夫婦は厚生年金に加入しているため、2人で毎月28.8万円、年間で345.6万円の収入を得ることが可能になります。もし、年間500万円の支出を考えている場合には、預貯金から毎年150万円程度、切り崩すことになり、65歳から90歳までの25年間で、3,750万円を支出することになります。

つまり、60歳から90歳までで預貯金から6,250万円を捻出することになるのです。

年金はあくまでも仮の金額ですので、自分たちの年金がいくらになるのか、夫の退職金もいくらになるのかを確認してください。退職金の支給額については、会社で決まりがあるはずです。それを基に、退職金を算出してみましょう。

滞在先によって生活コストは大きく変わる

希望としては、数カ月単位で、国内外で暮らすことを考えられているとのこと。日本国内については予算を組みやすいと思いますが、海外になると事情は変わってきます。アジアで暮らすのか、ヨーロッパで暮らすのか、北米か、南米かによってもかかるコストは違ってきます。

ヨーロッパの地方都市に滞在する場合、アパートメントハウスを契約する場合は、最低6カ月以上などと決められていることも少なくありません。行きたい国や地域にかかるコストはいくらになるのかを知り、毎年、予算立てをしていくと良いですね。

たとえばカナダ・バンクーバーで暮らす場合、ロングステイヤ-でも利用できるコンドミニアムは、1週間単位でも利用できるところもあります。たとえばダウンタウンでセキュリティや設備が整ったコンドミニアムを借りた場合の1カ月の家賃(水道光熱費含む)は、30万円あれば十分。その他に生活費として20万円を見込んだ場合は、50万円必要になりますが、これだけの金額をかけられれば、かなり豊かな生活を送ることができます。

希望や計画を具体的にしていく

今は、漠然と国内外で暮らしたいと考えていると思います。ただ、具体的な国や地域、ビザの必要性なども調べて、いつ、どのタイミングで、どこで暮らすのかを明確にして、計画することが大切ですし、成功する秘訣でもあります。

また、今の住まいをベースに他の場所に滞在する場合には、今の住まいのコストもかかります。仮でシミュレーションしている500万円内で納まれば良いのですが、それ以上の金額がかかるときには、暮らし方・働き方や、ライフスタイルの見直しは欠かせません。

ちょっと、面倒な作業になりますが、楽しい作業のはず! 頑張ってくださいね。

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