日ハム伊藤大海の“夢を叶える方法”とは? 子どもに伝えた「思い続けること」の大事さ

子どもたちからの質問に答える日本ハム・伊藤大海【写真:石川加奈子】

プロへの思いを強くさせた小学校6年生での挫折

野球日本代表「侍ジャパン」の一員として東京五輪の金メダル獲得に貢献した日本ハムの伊藤大海投手。21日に北海道鹿部町にある母校の鹿部小、鹿部中を訪問し、子どもたちと交流した。町民栄誉賞第1号になった右腕は自らの体験談を明かして夢の大切さを説き、人口3700人の小さな町の子どもたちを激励した。

「やんちゃだった」という小学生時代は、朝早くから学校の体育館でスライディングや鬼ごっこをして遊んでいた。プロ野球選手になりたくて野球を始め、野球が大好き。そんな伊藤少年は小学6年生の時にファイターズジュニアのセレクションに落ちて大きな挫折を味わった。

「すごく悔しくて、プロに行きたい気持ちがもっともっと強くなった。そこから自分でいろいろ考えてやるようになりました」。小学校の卒業論文には将来の夢として「メジャーリーガーになる」と記した。中学校に入学すると、函館東リトルシニアの練習がない月曜日から金曜日は、毎日5キロ以上走るという課題を自らに課した。「毎日学校が終わってからの夕方に。中学校生活、1回も休むことなくやり続けました」と胸を張る。

プロ野球選手になるには、どんな練習をしたら良いか――。そんな中学生の質問に、伊藤はなりたい自分を思い描き、愚直に前に進むことの大切を説いた。

「1回の素振りでも、ダッシュ1本でも、毎日やることに意味がある」

「思い続けることが大事。小学校、中学校の時の自分を客観的に見ると、絶対プロ野球選手になれるような選手ではなかったです。体がでかくてすごい奴がいたんだけど、『絶対にその子よりもプロ野球選手になりたいと思っている』という気持ちでやっていたら、高校、大学となった時に、自分が思い描いたものにどんどん近づいていた。それはどこから来たかというと気持ち。どういう練習をするかというより、今持っている気持ちをずっと忘れないで、それに真っ直ぐ突き進むのが一番」

夢に近づくための具体的な方法としては、継続と積み重ねを挙げた。「1回に多くなくていい。目標に向かって1回の素振りでも、ダッシュ1本でもいいので、毎日やることに意味があると思っています。1日ちょっとでもいいから、理想の自分に近づいていけるように」。毎日の課題をクリアしていくことで、精神的にもタフになる。「試合の苦しい場面で“俺はこれだけやってきたから大丈夫”だと思える何かを今からでも考えておくのは1つの手かなと思います。ピンチの時に自分を一番頼りにできるように」と説明した。

子どもたちには、スポーツに限らず、たくさんの挑戦と失敗を勧めた。「いろんなことに挑戦できる時間、体力、余裕もあると思うので、自分が興味あることだけでなくても、いろんなことに挑戦して、今はいっぱい失敗していいと思います。僕もいっぱい失敗してきましたし、その失敗が今の僕につながっているのが多いので。小学校、中学校の時に成功したことって、今につながってないというか、その場しのぎのことだったのかなと感じます。失敗して、本当にやりたいことはなんなんだろうと探す時間なのかな思います」と語りかけた。

伊藤自身、プロに入った現在も目先のことだけにこだわらず、5年後、10年後になりたい自分を思い描きながらトレーニングを積んでいるという。「もっともっと、みんなの自慢の先輩であれるようにやっていきたいと思います」と故郷の子供たちの存在もモチベーションにして、さらに大きく羽ばたく。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

© 株式会社Creative2