ヤクザが恐れた男が初めて明かす、 捜査秘録。 暴力、 殺人、 抗争、 恐喝、 闇金、 地上げ、 反グレ、 けん銃、 覚せい剤、 エンコ飛ばし。 社会の裏面で蠢く、 そんなヤクザたちと常に対決し、 身を徹して表社会との防波堤となってきた人たちがいる。 鋭い眼光、 ダブルのスーツに、 いかついネクタイ、 その太い腕に巻かれた「警視庁の腕章」がなければ、 どちらが“本職”か見分けがつかないぐらいの迫力。 暴力団事務所に踏む込む刑事たちの映像や写真を見たことがある人は多いのではないだろうか。 彼らが、 いわゆる「マル暴」だ。 日々の柔剣道訓練で体を鍛え抜き、 組員の威勢や恫喝にひるまず、 巧妙化する暴力団の知能犯罪を見抜き、 取調室でヤクザ一人ひとりの人生と対峙する。
«ヤクザがどこにでもいるように、 一都一道二府四十三県すべての都道府県にマル暴がいる。 »(本文より)
本書では、 警視庁で叩き上げの刑事として、 暴力団捜査を担当する組織犯罪対策課の管理官まで務めた著者が、 自身の経験をもとに「マル暴とは何か」「ヤクザとは何か」、 暴力団捜査のリアルを明かす。
«四ツ木斎場暗殺事件で住吉会の組員に確保された実行犯は、 警察の説得により、 その日のうちに警察に引き渡された。 警察の仲介により、 「手打ち」のためのトップ会談が開かれ、 形だけの解決を見たものの、 一方的に被害に遭っただけの住吉会内部には強烈な不満を残す結果となった。 その頃、 私は警視庁駒込署の暴力犯捜査係の警部補、 いわゆるマル暴刑事として、 ヤクザ事件を担当していた。 マル暴を拝命して20年近く経っていたので、 当然ながら、 ヤクザ社会を震撼させた「仁義破り」の四ツ木斎場事件も耳に入ってくる。 91年の暴対法成立に前後して、 山口組、 住吉会、 稲川会などの主要組織は「平和共存」を口にしていたが、 シノギのパイが目に見えて縮む中で、 ヤクザの抗争は全国で頻発していた。 管轄区内に組事務所がない駒込署にいても、 物騒な雰囲気はピリピリと感じとっていた。 だが私自身、 まさかこの後に、 関東2大組織の抗争のど真ん中に身を投じることになるとは、 このときは知る由もなかった。 »(本文より)
「四ツ木斎場暗殺事件」、 「日本医科大学病院ICU射殺事件」、 「群馬前橋スナック銃乱射事件」、 「住吉会幹部らによる東京防潮堤工事入札談合事件」、 「岡本ホテル預託金詐欺事件」、 「極東会幹部らによる小指切断重傷傷害事件」、 「山口組幹部らによるC型肝炎薬ソバルディ詐欺事件」・・・平成ヤクザ事件の内幕とは。 緻密で地道な捜査から、 取調室での緊張感のあるやり取り、 ガサ入れでの丁々発止まで、 ここまで詳細に、 暴力団担当刑事の活動が、 経験者によって記された本はほかにない。