鬼怒川温泉の廃ホテル解体“困難” 日光市が不法侵入対策を検討へ

市と宇大が調査に入る廃ホテルの一つ

 鬼怒川温泉街にある廃ホテル解体に関する調査を行うとしていた日光市は、解体のめどが立っていないことなどから目的を変更し、建物への不法侵入対策として宇都宮大と共同で近く調査研究を始める。22日、市への取材で分かった。当初は解体実現の可能性を含めた調査を検討したが、複雑な権利関係や所有者の所在不明などから解体は困難という。一方、施設への不法侵入が懸念されており、防止策を検討する。

 市総合政策課は「観光地として廃ホテルは懸念材料の一つ。解体が望ましいが市の財政的にも難しい」と明かす。その上で、初めて行う調査を「不法侵入による火災や防犯面での住民の不安を解消するため」と説明する。

 現在、市と今市署、市観光協会、鬼怒川・川治温泉旅館協同組合の4者が連携し、廃ホテルへの立ち入りを禁止している。しかし、ウェブ上には不法侵入したとみられる動画が投稿されているという。

 調査は空き家対策特別措置法に基づく。対象は市が把握する市内の大規模民間老朽施設16施設のうち、1999年ごろから2008年ごろに廃業・閉館したとみられる藤原の3施設。いずれも鉄筋コンクリート造の8~10階建て。

 調査では市職員と宇都宮大地域デザイン科学部の准教授ら計5人が、建物内部の危険な場所や物の有無、残置物や侵入形跡などを確認する。アスベストの飛散などを想定し、防じんマスクなどを着用して実施する。

 市は今後、23年度にかけて定期的に調査して対策を講じる方針。調査は当初、20年度に実施する予定だったが、新型コロナウイルス禍で延期となっていた。

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