喫煙者減少で葉タバコ農家の廃作相次ぐ 長崎県、南島原市など 野菜転換へ支援策検討

県内最大の生産量を誇る南島原市。国内需要が縮小し県内57戸の廃作が決まった=同市有家町(県島原振興局提供)

 日本たばこ産業(JT)が先月11日、全国の葉タバコ農家の約4割の1729戸(長崎県内は57戸)が今年で廃作を決めたと発表した。紙巻きたばこの需要が減っているためで、7月から10年ぶりに廃作を募っていた。来年の耕作面積は34%減り、3889ヘクタールになる。長崎県内最大産地の南島原市でも廃作が相次いでおり、JTの発表を受けて、同市などは野菜など他の作物への転換を促し、農家所得確保に向けた支援策を検討している。
 同市深江町の田浦達也さん(63)は葉タバコ栽培に従事して44年目。雲仙・普賢岳の山すそ、眼下に有明海を望む絶景の地で次男浩太さん(31)とともに栽培を継続する道を選んだ。「周りでは4人が廃作する。19歳で葉タバコ栽培を継ぎ、雲仙普賢岳噴火災害(1991~96年)も乗り越えて家族を養ってきた。年金だけでは到底暮らせない。後継の次男のためにも踏ん張らないと」。1~3月の種まきや苗の定植に向け土壌づくりに励んでいた。
 国内の喫煙者人口は、たばこの値上げや、健康志向の高まりで1966(昭和41)年の83.7%をピークに減少の一途だ。厚生労働省の「成人喫煙率の調査」(2019年)では、習慣的な喫煙者の割合は16.7%(男性27.1%、女性7.6%)。20年4月に全面施行された改正健康増進法などにより、喫煙者はさらに減少しているとみられる。
 JTによると、県内の栽培農家は10年前の11年には428戸(栽培面積869.7ヘクタール)だったが、21年は246戸(同495.2ヘクタール)とほぼ半減。南島原市でも18年の218戸(同473.7ヘクタール)から21年は138戸(同273.3ヘクタール)と減少している。
 JTは国内産の葉タバコを全量買い取るよう義務付けられており、中長期で需給のバランスを取るには、協力金(耕作面積10アール当たり36万円)を支払って農家の自主的な廃作を後押しする必要があると判断した。
 ただ、廃作が進めば遊休農地化し、地域が荒廃する恐れもある。南島原市農林課は「県島原振興局と市に相談窓口を設置する方向。廃作農家へは、廃作農地の有効活用や品目転換に対しての事業紹介や栽培技術支援の相談会を個別に実施予定」としている。
 市内の農家は「協力金をもらって廃作しても生活できるのは1年程度。その後どうするのか。高齢者の多い廃作農家がどの程度、栽培手法や設備の異なる野菜に転じることができるのか疑問」と苦しい胸の内を明かした。


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