【追う!マイ・カナガワ】横浜・有隣堂本店の絵画は謎じゃなかった 作者名掲示で増す存在感

「光藤俊夫/題名不詳/1953年」と記された絵のプレート=横浜市中区の有隣堂伊勢佐木町本店

 有隣堂伊勢佐木町本店(横浜市中区)に飾られていた謎の絵の正体を突き止めた「追う! マイ・カナガワ」の記事が掲載されて3カ月。約65年ぶりに“判明”した作者名のプレートが掲示されたと聞き、同店を再び訪ねた。

 伊勢佐木町の本通りに面した同店の入り口を抜けると、その絵は以前と変わらず、左手の壁、高さ3メートルの場所でひっそりと店内を見下ろしていた。

 「空気みたいに存在し、あるというよりは、『いる』という感じ。以前にお客様から聞かれてはじめて見上げ、それ以来、素敵な絵だなと思っていたんです」

 加藤秀樹店長(55)が出迎えてくれた。

 同市南区の男性(53)から「作者はだれ?」とマイカナ取材班に質問が寄せられたのが1月。同店やOBらと協力して調査し、1956年竣工の本店ビルの設計に携わった光藤俊夫さんの作品と判明。「“ハマの本棚”に謎の絵」と題した記事を9月中旬に掲載した。

 「昨年はちょうど有隣堂の創業111周年で、絵の歴史を掘り起こすにも奇跡的なタイミングだった」と広報担当者。同店では以前から常連客に絵について聞かれていたが、確かな情報が無く、「社内で調査しても分からない」と回答していたという。

 11月下旬、有隣堂は絵画の下に光藤さんの名前を金色のプレートで刻んだ。来店客から「あれが記事の絵か」と声を掛けられるという加藤店長は「マイカナの記事で、新たな財産を見つけられた。本店ができた当時から同じ場所にあり、内装は変わっても、私たちをずっと見守ってくれているかも」と絵画を見上げた。

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