「広島と分断するのか」 長崎の被爆体験者ら怒り 「黒い雨」救済指針骨子案受け

長崎の被爆体験者を対象としない国の骨子案に対し「広島も長崎も平等であるべき」と憤る岩永さん(中央)=長崎市内

 「広島と長崎は平等のはず」「分断するな」-。厚生労働省が被爆者認定指針改正に向けて長崎、広島4県市と話し合う5者協議で、長崎原爆に遭いながら国の指定地域外にいて被爆者と認められていない「被爆体験者」を救済対象としない骨子案を示したことを受け、23日会見した被爆体験者や支援者らは怒りや失望をあらわにした。
 長崎原爆の投下後には、国指定の被爆地域外でも、放射性物質を含む黒い雨や灰が降ったとする証言が多数ある。被爆者認定を求める被爆体験者集団訴訟の原告、岩永千代子さん(85)は国の骨子案に「あぜんとする。広島の黒い雨と、長崎の黒い雨では何が違うのか」と困惑した。
 広島原爆による黒い雨訴訟で広島高裁は、放射性微粒子を体内に取り込む「内部被ばく」による健康被害の可能性に言及した。被爆体験者を支援する県保険医協会長の本田孝也医師は広島高裁判決について「内部被ばくによる健康被害の可能性を否定できないとして被爆者認定している」として、被爆体験者も同じ事情にあると指摘。一方で、国の骨子案は「(認定対象を)場所や時間まで無理やり広島の黒い雨に限定していて、広島高裁判決を大きく逸脱している」と主張した。
 被爆体験者訴訟弁護団の三宅敬英弁護士は、長崎の被爆未指定地域では米国の「マンハッタン管区原爆調査団」により高い放射線量が記録されており、「長崎には原告らが被ばくしたという明らかな証拠がある。広島と長崎を分断せず、救済してほしい」と述べた。

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