「黒い雨」救済、長崎含まれず 県と市「被爆体験者も対象に」 厚労省指針骨子案に反発

被爆者認定指針改正の骨子案に対し「このままでは受け入れられない」と反発する長崎県と長崎市の担当者ら=市議会第1応接室

 広島原爆による「黒い雨」被害者救済のための被爆者認定指針改正に向けた厚生労働省と広島県、広島市、長崎県、長崎市の5者協議が23日、オンラインで開かれ、厚労省は指針改正の骨子案を示した。認定対象は広島の黒い雨被害者に限られ、国の指定地域外で長崎原爆に遭い、被爆者と認められていない「被爆体験者」は含まれなかった。長崎県・市は「このままでは受け入れられない」と反発。今後の協議で対象に加えるよう求めていく方針。
 広島の黒い雨訴訟は7月、原告84人を全員被爆者と認めた広島高裁判決が確定。政府は原告と「同じような事情にあった」人も救済するとした首相談話を閣議決定している。
 骨子案は、黒い雨に遭ったことが確認でき、遭ったことが否定できない場合も認定対象とした。認定要件は、現行と同じがんなど11種類の疾病にかかっていることを維持。このうち白内障については手術歴がある人も新たに含めるとした。
 認定対象となる「黒い雨に遭った者」は、場所や時間帯など当時の状況が「原告と同じような事情にあったことが確認できること」とした。認定対象を巡り、長崎県・市が、被爆体験者も入るか確認したところ、厚労省は対象に入っていないと説明したという。
 長崎県・市はこれまでの協議で、長崎でも黒い雨や放射性物質を帯びた灰などを浴びたとする証言をまとめた1999年度の県・市による調査資料を提出し、「広島と同じ事情にある」と主張。被爆体験者の救済を求めてきた。
 今回の協議で、厚労省はこの調査について、客観性を担保する必要があると指摘。今後、県・市は検証を進めるとした。
 協議終了後、会見した長崎市原爆被爆対策部調査課の林尚之課長は「被爆体験者からも期待を受けていたが、何も得られず残念だ」と語った。
 広島、長崎両県市は27日までに骨子案に関する意見を回答する。厚労省は改正指針を来年4月から運用したい考え。


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