長崎この1年2021<2> SSK新造船休止、三菱香焼工場売却 名門企業 大きな転機

佐世保重工業の最後の新造船が進水する=10月20日、佐世保市

 長崎県の基幹産業である造船業。国内各社が苦境に立たされる中、県内の二つの名門企業が今年、大きな転機を迎えた。
 10月20日午後、長崎県佐世保市の佐世保重工業(SSK)。中型ばら積み船が、ドックから海へと進み出した。来年1月で新造船事業を休止する同社にとって最後の建造となる船の進水。ドックが見える道路沿いでは、元従業員ら十数人が、その様子を目に焼き付けていた。
 1946年、SSKは旧海軍工廠(こうしょう)の施設を借り受けて設立。これまでに500隻以上の船を世に送り出し、地元経済をけん引してきた。
 2008年のリーマン・ショック以降、新造船需要や船価が低迷。SSKは14年に名村造船所(大阪市)の完全子会社となり、経営の立て直しを図った。しかし、新型コロナウイルス禍で受注環境はさらに悪化。新造船事業からの事実上の撤退を決めた。
 5月には希望退職者を募集。応募した248人が現在、順次退職している。市によると、退職者の多くは市内企業に再就職しているという。
 ただ、協力会社や下請け企業の従業員は1500~2千人に上るとされ、地元経済に与える影響は計り知れない。行政機関などが再就職や事業再構築の支援に当たっているが、予断を許さない状況が続く。市は「資金繰りや雇用維持の問題を注視していく」とする。
 SSKは修繕船事業を強化していく方針。3月には今後需要が期待できる液化天然ガス(LNG)船の修繕を初めて受注した。来年もさらなる事業拡大を図り、早期の黒字化を目指す。
 長崎市が発祥の三菱重工業長崎造船所は3月30日、国内最大級の建造ドックを含む香焼工場(同市香焼町)の新造船エリアを大島造船所(西海市)に売却する契約を締結。中韓メーカーの安値受注などのあおりを受け、原油大型タンカーやLNG船などの建造で競争力維持が困難と判断した。
 1972年の完成から323隻を建造。造船の町を象徴する門型クレーン3基の「三菱マーク」も今月上旬までに塗りつぶされ、2022年度中の譲渡準備が段階的に進む。従業員はグループ内企業などへの再配置が協議されている。
 今後、修繕や脱炭素など環境関連事業の技術協力に注力。「さみしい限りだが、これまでも不況は多々あり、世の中が求める製品を開発して乗り切ってきた。今は頑張るしかない」。同社関係者は静かに語った。


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