【鉄道博士の気になる機材 #4】 ニコンZ9 鉄道写真撮影に最適な「UNSTOPPABLE」モンスター

この連載では、鉄活動に利活用できるガジェット・機材を中心に、Amazonの私のショッピングカートの中身について論評していきます。読者の皆さんのガジェット・機材選びの参考にしていただきたいと思います。

第1第2回に引き続き、今回も、「キヤノン EOS-1D X」の後継にする機材の検討をしていきます。株式会社ニコンイメージングジャパンのご厚意により、話題沸騰中の「ニコンZ9」に、「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」を組み合わせて試用させていただきました。

私は、本連載第2回で述べたように、1987年のEOS650以来、35mm一眼レフはキヤノン一筋でした。もちろん、ニコンのカメラが優れていることは十二分に承知していました。しかし、ニコンは、一眼レフのオートフォーカス化の際にレンズマウントを変更しなかったので、1959年から続く口径の小さなニコンFマウントを使い続けてきました。ニコンFマウントは、キヤノンEFマウントに比べてあらゆる面で不利であると私には感じられました。Fマウントのレンズ資産を持たず、最初に使った一眼レフがEOS650だった私は、積極的にニコンの一眼レフを使うメリットを見出せなかったのです。

しかし、ニコンZマウントは、ニコンFマウントとは全く違う規格です。フルサイズミラーレス一眼のレンズマウントとして必要な要素を考え抜かれて設計されているように感じるのです。ニコンZマウントの内径は55mmもあり、同Fマウントの44mmを11mmも上回り、今後の拡張性を十二分に考慮した余裕のある設計になっています。ニコンZマウントの内径は、他社のフルサイズミラーレス一眼のレンズマウントの内径よりも大きく、口径の小さなニコンFマウントの反省が活かされているようです。

ニコンZ9

さて、「ニコンZ9」に「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」を取り付け、実際に試用してみます。「ニコンZ9」は、現行の一眼レフのフラッグシップモデル「ニコンD6」より大幅に小型化(体積で約20%↓)・軽量化(バッテリーおよびメモリーカード込みで約1340g)されていながら、グリップを握った際の「しっかり感」の素晴らしさはそのままで、長年にわたるプロ・ハイアマチュア用カメラの経験の蓄積が反映されているようです。「NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S」は、キヤノンが大幅に小型・軽量化した「RF70-200mm F2.8 L IS USM」に比べると大きく重いのですが、明るくて便利な70-200mmF2.8レンズなのですから、この大きさ・重さ(三脚座を装着時約1440g)でも不満はありません。

ニコンZ9 + NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S

レンズ側から見ると、このようになります。新時代のニコンのフラッグシップミラーレス一眼カメラに相応しい、堂々たるデザインだと思います。

私たち鉄道写真家にとって嬉しいのは、オートフォーカスの被写体検出機能に「列車」が加わっていることです。他社のフルサイズミラーレス一眼の被写体検出機能に「列車」があるものは見たことがないので、これは本当に心強いです。実際に、高速走行するE5系新幹線を試写してみましたが、ピントを合わせたい運転室の窓付近に自動でピントを合わせ続けることができました。この機能は驚異的で、近年、発展が著しいAIのディープラーニング(深層学習)を、ニコンは自家薬籠中のものにしていることがうかがえます。

「ニコンZ9」で特筆すべきことは、極限までローリングシャッター歪みを抑制したイメージセンサーを採用したことにより、メカシャッターを装備していないことです。これは、相当の自信がないとできない、思い切った決断です。これにより、レリーズが静かで、シャッターの耐久性を気にすることなく大量の写真を撮ることができます。

縦横4軸チルト式画像モニターをもつニコンZ9

アイディア賞ものだと思ったのは、背面液晶モニターが縦横4軸チルト式になっていることです。このような背面液晶モニターを他の機種では見たことがないので、おそらく、「ニコンZ9」が初めて採用したのだと思います。バリアングル式と違って光軸がズレないですし、可動部が頑丈そうに見えます。

さて、「ニコンZ9」のテーマは「UNSTOPPABLE」。新画像処理エンジン「EXPEED 7」は、「ニコンZ7 II」比で約10倍の高速処理を実現しています。また、CFexpress Type Bの高速書き込みによって、高効率RAWまたはJPEG FINE(L)設定時、約20fpsで1000コマ以上の驚異的な連続撮影を可能にしています。バッファメモリの容量を気にすることなく、気の赴くままに連続撮影を楽しむことができます。

控えめに表現しても、「ニコンZ9」は「モンスター」と呼ぶに相応しい、素晴らしいカメラです。ニコンが本気になると、ここまで凄いカメラをつくれるのですね。感動しました。様々な被写体の撮影に向いているカメラですが、前述の通り、鉄道写真撮影に役立つ機能が搭載されていますので、鉄道写真家の皆さんに特にお勧めしたいカメラです。

【著者】鉄道博士 / Dr. Railway

生後2ヶ月より、鉄道を眺め始め、列車の音が、子守唄代わりになる。 3歳で、交通博物館(鉄道博物館の前身)のリピーターとなる。保育園に登園前の早朝から、最寄駅に年200回ペースで通い始める。 5歳で、鉄道に関するニュースが読みたい欲で、毎日、複数の新聞を読むようになる。小学校入学までには、ほとんどの漢字を読めるようになる。 小学校の入学祝いに「国鉄監修 交通公社の時刻表(現 JTB時刻表)」を買ってもらい、全ページ読破し、旅行の計画を立てるようになる。 10歳で、一眼レフでの鉄道写真撮影をスタート。学生時代は、鉄道の写真をひたすら撮る生活を送り、塾等も行かず、法政大学へ入学。 その後も、企業の取締役、海外との業務提携等の仕事をしながら、鉄道写真を撮り続け、鉄道誌に寄稿を続ける。 1949年以降の日本の車輌であれば、数百種類の車輌の解説が可能。それぞれの特徴や魅力も含めて何でも楽しく解説する姿から”鉄道博士”と呼ばれるように。

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