羽田アンビシャスの武島監督は来年監督18年目を迎える
ポニーリーグ(中学硬式)の強豪「羽田アンビシャス」は、2004年に部員1人で発足し、現在は74人の大所帯になっている。今秋のドラフト会議ではOBの柴田大地投手がヤクルトから3位指名を受けた。日々の練習を支えているのは、指導に励むOB保護者と“パパコーチ”。発足当初からチームを率いる武島信幸監督にとってはありがたい存在である一方、指導方針の確立には難しさも出てきているという。
子どもの入団とともに指導を始めたパパコーチの姿は、少年野球ではごく当たり前の光景。武島監督は「親の影響で、野球をやる子も増える」と肯定的にとらえている。ただ、子どもが小学校から中学校、中学校から高校へと進学するタイミングで“卒団”する保護者は多く、指導体制に影響が出てくることもある。
「チームの方針がブレたり、指導が継承されなかったりする場合もあります」。コーチの入れ替わりが激しく、教える内容や考え方にばらつきが出ることを懸念。チームによってはコーチだけでなく監督も“パパ”が務め、卒団後に指導体制が一新してしまうケースも。子どもたちが戸惑う可能性もあり、入団希望者の減少につながるのではないかとの思いもある。
「組織としての方針を立てれば、チームの方針もぶれなくなる」
当然、保護者にも事情がある。羽田アンビシャスでは、武島氏が創部から17年間監督を務め、子どもの入団とともに指導するようになったパパコーチも、子どもが卒団した後もコーチとして在籍してくれているが、このような現状が容易ではないことは分かっている。パパコーチがいるからこそ、少年野球が存続できている現状も十分理解した上で、解決の糸口を探る。
「うーん、正直難しいですよね……。組織が変えていくしかないのではないでしょうか」
提案するのは、各チームが所属している組織全体での意識統一。パパ監督やパパコーチに入れ替わりが起きても、連盟が指導について同じ方針を打ち出していれば、大きくブレることはないとの考えだ。さらに、新たに就任する新米監督の指導指針にもなり得る。武島監督は「大会を主催するだけではもったいないですよね」と、連盟とチームの深いつながりを求める。
実際に、羽田アンビシャスが所属するポニーリーグでは、「野球は試合に出て覚える」という理念のもと、リエントリー(交代後の再出場)や、チームの中に複数のチームを作って出場できるシステムを設けている。さらには、怒声や罵声に対してはイエローカードを出すなども記載。明確になっている組織としての方針をそれぞれのチームに落とし込み、日々の指導に生かすことができる。
現状も理解しつつ、新たな問題を提起する武島監督。根底にあるのは、野球少年の未来。子どもが迷わずプレーできる環境を願っている。(川村虎大 / Kodai Kawamura)
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