再婚予定の44歳シングルマザー「彼の転勤についていく場合、仕事や持ち家をどうする?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、看護師として働く44歳シングルマザーの方。子どもの独立とともに再婚を考えている相談者。再婚予定相手の転勤先についていくことを考えていますが、新しい土地での仕事や、1,500万円のローンが残った持ち家をどうするかなどについて不安があると言います。整理しておくべきお金のことは? FPの坂本綾子氏がお答えします。


44歳地方看護師シングルマザーです。18歳の子どもがこの春、東京に就職が決まり、卒業に合わせて再婚を考えています。ローン残高約1,500万、返済残り28年の持ち家がありますが、再婚相手が転勤族のため、家を置いてついていくつもりでいます。私一人名義のため、遺産として子どもに残すつもりです。

現在の仕事を辞め、この年齢で新しい土地で働くことに不安を感じています。もしも、馴染めなかった場合、また、今よりも収入が下がった場合や、専業主婦で生活できるか、その場合将来の年金額はどのくらいになるのか、ご教示ください。再婚は嬉しいのですが、将来の不安が強いです。

私は正社員でなくても生活していけるでしょうか? 住宅ローンは自分で返済していきたいと考えています。

【プロフィール】

・女性、44歳、会社員、独身(再婚予定)

・子ども:18歳、来年3月高校卒業、就職で東京へ

・再婚予定相手:52歳、おおよそですが手取り45万円

家賃補助あり、住居費2万円くらい

自社持ち株あり、金額不明 積立年数18年。退職金なし

離婚した際年金分割している。現時点での年金額16万円くらい

・住居の形態:持ち家(戸建て・中国地方)

・毎月の世帯の手取り金額:34万円(相談者のみ)

・年間の世帯の手取りボーナス額:95万円(相談者のみ)

・毎月の世帯の支出の目安:21万円(相談者のみ)

【毎月の支出の内訳】(相談者のみ)

・住居費:5万5,000円(住宅ローン)

・食費:1万4,000円

・水道光熱費:8,000円

・教育費:6万5,000円 (子ども費、寮費、小遣い)

・保険料:5万5,000円(医療保険2万5,000円、学資保険20才満期 月1万5,000円)

・通信費:8,000円(固定電話、携帯1台)

・お小遣い:5万円(趣味、娯楽費、交際費)

・その他:7万円(被服、美容費5,000円)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:5〜0万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):300万円

・現在の投資総額:108万円(つみたてNISA含む投資信託約80万円、 株28万円)

・現在の負債総額:住宅ローン残高1,500万円(固定金利1.3%くらい、支払いあと28年)

・今の職場に転職して4年目のため、現時点での退職金は50万円

坂本:ご相談ありがとうございます。シングルマザーとしての子育てが一段落し、新しい人生を踏み出すのですね。1人より2人の方が経済的にも心強いし、これまで頑張って働いてきたのですから、しばらくは仕事を休んでのんびり過ごすのもよいかもしれません。しかし、嬉しいと同時に不安も強いとのこと。現在、とても重要な場面に立っているので、不安を感じるのは当然かもしれません。

結婚すると変わるお金関係のことをチェック

再婚を前提に、お金について整理してみましょう。

まず、入籍する=法律上の夫婦になると、それぞれの相続がこれまでと大きく違ってきます。持ち家は「子どもに残すつもり」と書かれていますが、入籍後は、相談者さんに万一のことがあった際は、遺産の2分の1は夫が、残り2分の1を子どもが相続することになります。これは再婚相手である夫が亡くなった場合も同じです。夫に前妻との子どもがいれば、相談者さんが2分の1、前妻との子どもが2分の1です。配偶者の立場は強く、相続では常に配偶者が2分の1を相続できます。

ただし、相続人全員で話し合って合意すれば、違う分け方をすることもできます。お子さんは18歳ですから、お子さんも入れて一度3人で話し合い、家は子どもに相続させたいという意思表示をしてはいかがでしょうか? 受け入れて実行してくれるような信頼関係が築けているなら問題ないでしょう。とはいえ、しばらくは入籍せずに、夫婦としてこれからやっていけるかを確認する時間をとるのもよいかもしれません。

相続や税金に関わることは正式な婚姻関係が成立していないと認められませんが、社会保険は生活実態を重視します。事実婚でも、例えば専業主婦になった場合は会社員である夫の被扶養者として公的年金の第3号被保険者になることができますし、健康保険も被扶養者になれます。自分で年金や健康保険の社会保険料を払わなくてもいいということです。

持ち家はどうするべき?

次に、持ち家について。まだ、1,500万円のローンが残っていて支払いが28年あります。現在44歳ですから、ローンが終わるのは72歳です。次の仕事が見つかるまでは貯蓄から払うとしても、いずれは復職して一定額の収入を確保しなければ、払い続けることが難しくなります。家の名義は相談者さんですから、夫の収入からではなく自分の収入からローンを払うのが適切です。

もう1つ、問題があります。子どもは就職して東京に行く、再婚相手は転勤族で持ち家を置いていくので、空き家のローンを払うことになります。空き家のままローンを返し終わったとして、28年間も空き家だった家に、そのまま人が住むのは難しいでしょう。遺産として残せるのは土地の価値になります。ただし、お子さんにはお子さんの人生があり、将来は東京で結婚して自分の家を買うかもしれません。相続時には家を売ることも想定しておいた方がいいでしょう。

持ち家を貸す場合のローンのこと

住まなくなった家を、とりあえずどうするか、よくあるのは人に貸す方法です。ローンと同額くらいの家賃をもらうことができればローンの負担がなくなります。ただし、通常の住宅ローンはその家に住んでいることが条件なので、人に貸す場合は現在の住宅ローンを一括返済した上で、アパートローンに借り換える必要があります。アパートローンは住宅ローンよりも金利が高めになります。いずれまた、この家に戻って住みたいなら、家賃は低めになりますが、「定期借家契約」にしておけば、更新せずに賃貸契約を終わらせることができます。

再婚相手が家を持っているかどうかは記載がありません。52歳ですから、あと10年弱で定年です。現在は転勤族で家賃補助を受けて賃貸ですが、定年後に夫婦の住まいをどうするのか。相談者さんの持ち家に戻って一緒に住むのか。これも話し合った方がいいですね。

生活費については、再婚相手が定年退職するまでは、それほど心配はいらないでしょう。手取り月45万円に家賃補助があれば、夫婦2人の生活には十分ではないでしょうか。あとは、持ち家を貸して家賃でローンを返すか、住宅ローン分だけでも働いて収入を得ることです。

年金についてしっかり考えておきましょう

今からしっかり考えておきたいのが老後の生活費です。再婚相手は離婚の際、年金分割しているとのこと。分割の割合は分かりませんが、最大で結婚していた期間の厚生年金の2分の1は前妻が受け取ることになります。その分、再婚相手の将来の年金が減ります。一方、相談者さんは44歳ですから約20年、厚生年金に加入してきたはずです。できれば60歳前後までのあと20年程度、一定額の給与をもらって厚生年金に加入した方が将来の年金額が増えます。

年金については「ねんきんネット」で、これからどれくらいの給与で何年働くかなどの条件を入力して将来受け取る年金額をシミュレーションできます。「ねんきんネット」は、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」に記載のアクセスキーを使って登録すれば利用できます。

仕事については、まだ40代半ばですから働き盛りです。看護師は人手不足の職種ですし、20年のキャリアがありますから、仕事はきっと見つかると思います。正社員が理想ですが、正社員でなくても社会保険に加入できる働き方なら、やりくりできるでしょう。1日も早く新しい土地や職場に馴染めるといいですね。

今回のポイントをまとめると…

まとめると、しばらくは入籍せずに一緒に暮らしてみる、夫婦としてやっていけると確信できたら入籍して、持ち家は人に貸すことを考える、仕事を探して働き厚生年金に加入する、再婚相手と老後の住まいや老後資金について話し合うといったところでしょうか。

夫の勤務先には退職金がありません。持ち株が退職金代わりのようですから、持ち株の資産価値がどれくらいかを確認し、並行して定期預金などで貯蓄を。60歳以降も厚生年金に加入して継続雇用で働けるようなら、今からでもiDeCo(個人型確定拠出年金)に入ることを検討してもいいですね。65歳まで働くならあと13年間あるのでギリギリ間に合います。相談者さんも、新しい勤務先の状況に応じて、財形貯蓄やiDeCo(個人型確定拠出年金)、定期預金の積み立てなどを活用してください。生活が安定し、貯蓄が増えたら、住宅ローンの繰り上げ返済も検討していいでしょう。

せっかく巡り合った相手と幸せな人生の後半を過ごせるよう、2人で協力して老後資金をしっかり貯めていきましょう。

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