「黒い雨」救済 指針骨子案「受け入れられない」 厚労省に長崎県、市回答

「広島に限定される指針骨子案は受け入れられない」と話す県原爆被爆者援護課の山崎課長(左)と長崎市原爆被爆対策部調査課の林課長=県庁

 広島原爆による「黒い雨」の被害者救済のため厚生労働省が示した被爆者認定指針の骨子案について、長崎県と長崎市は27日、「広島に限定される指針骨子案は、受け入れられるものではない」と厚労省に回答した。長崎でも黒い雨が降ったことは過去の調査で明らかと主張。国の指定地域外で長崎原爆に遭い、被爆者と認められていない「被爆体験者」も対象に加えるよう改めて求めた。
 広島県・市は骨子案を受け入れる意向を伝えた。長崎県・市と厚労省は引き続き協議していく。
 骨子案に対する回答で、長崎県・市は1999年度の証言調査により広島と同様に被爆地域以外でも黒い雨などが降ったことが明らかと強調。長崎も対象として認定指針の骨子に明記するよう要望した。
 さらに骨子案について「今なお苦しみ続けている被爆体験を有する方々に対し、長崎で黒い雨などが降ったかどうかの事実認定のための新たな裁判を誘発する」と指摘した。
 同日午前、県が県市連名の回答をメールで送信。県庁で会見した県原爆被爆者援護課の山崎敏朗課長は「高齢の被爆体験者にとって、今も裁判は負担になっており、事実認定のためにさらに裁判を起こさないといけないのか。同じ被爆地であり同様に扱ってもらいたい」と述べた。
 一方、回答に先立ち、被爆体験者と支援者は、県と市に対し、被爆体験者を骨子案の対象に加えるよう国に働き掛けを要望。被爆体験者の岩永千代子さん(85)は「協議は佳境に入った。救済するという姿勢をしっかりと堅持してもらいたい」と訴えた。
 骨子案は厚労省が、23日の広島、長崎の両県市との5者協議で提示。「黒い雨に遭った」ことが確認できることを要件とし、遭ったことが否定できない場合も含めるとした。ただ、黒い雨は広島原爆に限定し、長崎は対象に含まなかった。


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