元ドラ1右腕の第2の人生 ロッテへ“恩返し”構想は「ビールの売り子してもいい」

元ロッテの内竜也氏【写真:町田利衣】

内竜也氏は4月に「株式会社V-slider」を設立し代表取締役になった

元ロッテの内竜也氏は、2020年シーズン限りで球団一筋17年間の現役生活を終えた。今年4月に自身が代表取締役となり「株式会社V-slider」を設立。かつてのドラフト1位は、セカンドキャリアで子どもたちのためのスポーツアカデミー創立とロッテへの恩返しを目指して動き始めた。

直球とスライダー。ほぼこの2種類だけで、内氏は並みいる強打者と戦ってきた。「自分はスライダーしかなかったけど、1つの武器を持ってプロ野球選手を17年間できた。“1つしかない”ではなく、1つあれば何でもできる。社会に出る時も、1つ武器を身に付けようと思いました」。会社をつくるのにあたり、真っ先に「スライダー」の文字を社名に入れることを決めた。

会社を設立したのは「将来的にやりたいことのために、しっかりと動き出したかったから」だ。「やりたいこと」は主に2つある。1つはスポーツアカデミーを創設し千葉出身選手を輩出すること。拠点とするかずさ地区で、野球だけでなく様々なスポーツを体験できる場所を目指す。

現在「ブリングアップベースボールアカデミー」で子どもたちに指導する中で、痛感したことがある。自身は丁寧に教えているつもりでも、ポカーンとしている子どもたち。「理由を聞くと、動かし方が分からないと言うんです。例えば“腰を落とせ”と言っても、まず落とし方を教えてあげないと。子どもたちには体の使い方が大事になると思う」。トレーナーを充実させることに加え、他競技を経験して野球とは違った体の使い方を学ぶことも大事だと考える。千葉県内にある8つのプロスポーツ団体のOBとの連係など、具体的なプランも思案中だ。

応援ツアー企画もコロナ禍で実現せず

もう1つはロッテへの恩返し。ファンを盛り上げる応援ツアーなどを今シーズン企画したが、新型コロナウイルスの影響により実現することはなかった。それでも状況が落ち着けば、やってみたいことは多くある。「例えば球場でファンに試合を解説したり、球場内のグッズ売り場にOBが立ったり、喜んでくれるお客さんがいるならビールの売り子をしてみてもいい」と驚きの構想の一端を明かした。

熱狂的な声援に背中を押され、マウンドに立ち続けてきた。「現役時代は感謝していても、やはり距離が遠かった」というファンには「辞めた今、近くに思ってほしい」とイベントなどで積極的に交流を図る。「ファンを盛り上げて、ロッテを盛り上げたい」と熱い思いを語った。

2003年ドラフト1巡目で川崎工高からロッテに入団。30台半ばで出る社会に「苦労は全部。公立高校出身だし、大学社会人を出ている選手に比べて圧倒的に知り合いも少ない」と苦笑いする。

右も左も分からない中で、コロナ禍により活動も制限されたが「今は色々な人の話を聞いて勉強させてもらったり、土台づくりの時期と捉えています。3~5年後、1つでも形にしていたい」と目標を掲げた。

第2の人生は始まったばかり。千葉のために17年間腕を振り続けた男は、この先も千葉のために尽くす。(町田利衣 / Rie Machida)

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