「住宅ローンと3人の学費を払いきれる?」ローンを組む前に考えなければいけないこと

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、妻と3人の子どもと暮らす44歳会社員の方。親から譲り受けた家が老朽化してきたため、建て替えを予定していますが、ローンや3人の子どもの学費を支払っていけるのか不安があるといいます。ローンを組む前に考えておかなければいけないこととは? FPの渡邊裕介氏がお答えします。


親から頂いた持ち家(ローンなし)で暮らしていますが、老朽化のため、ここ数年で建替えを検討しています。

ただ、現在の収入が低く、家の建替えローンや、子ども3名の学費を支払っていけるのか心配です。また、この状況で老後の備えはどの様にすればよいかアドバイスをよろしくお願い致します。

世帯主が働く会社は完全固定給となっており、退職金はありません。現在の収入は、世帯主の稼ぎと投資(日本株・新規公開株IPO抽選)が主となります。また来年より妻が扶養内で働く予定となっております。

【相談者プロフィール】

・相談者:男性、42歳、会社員。現在働いているのは世帯主一人です。

・妻:41歳。来年からパートに出る予定です。

・子ども:3歳、9歳、12歳

・住居の形態:持ち家(戸建て・近畿地方)

・毎月の世帯の手取り金額:27万5,000円

・毎月の世帯の支出の目安:17万円

【毎月の支出の内訳】

・食費:6万円

・水道光熱費:2万円

・保険料:1万2,000円

・通信費:1万2,000円

・車両費:1万円

・お小遣い:2万円

・その他:4万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:7万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,600万円

・現在の投資総額:100万円

・現在の負債総額:0円

渡邊:こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊です。ご自宅の建替えのご相談です。親から譲り受けた住宅が古いため、建替えを検討されていますが、まだお子さんも小さいため、現在の収入と貯蓄で建替えのためのローンの返済と教育費が準備できるかどうか、老後の備えをどのように行えば良いのかとのことです。

まず確認することは、自宅の名義

まずは、ご自宅の状況について確認しましょう。

現在、親から頂いた持ち家とのことですが、名義もご自身になっているのかどうかの確認は重要です。もしかすると、名義は親のままにして住んでいるケースもあるかと思われます。その場合は注意が必要となります。

もし土地の所有権が親にあるとすると、その上に建物を建て住宅ローンを組む場合には、その土地に「担保設定」をしなければなりません。親の土地に金融機関などの担保設定がなく、また担保価値に問題がなければ、住宅ローンを組むことは可能ですが、ローンが残っている場合、既に担保設定されているため、新たに別の借入れに対して担保にすることが出来ません。

ご相談者の場合、既に住宅ローンは無いとのことですので、他の担保設定はされていないと予想されるので、ここに関しては問題ないと思われますが、場合によっては親が「連帯保証人」になることを求められることもあるので金融機関に確認しましょう。

連帯保証人は、ローンの返済について借り入れた方と同等の責任を負うことになるため、もし親の土地に家を建てる場合は、十分な話し合いを行いましょう。

今回のご相談に関しては、既に親から贈与を受けて所有権の移転登記もされている、もしくは上記課題をクリアしていると仮定します。

優先順位を決めて「いつ」「いくら」必要か整理

まずは、大きな経済的目標の優先順位を付けましょう。ご相談者の場合は、「教育費」「住宅建替え」「老後」の3つに分けられます。今回は下記優先順位と仮定します。

1.教育費
2.老後
3.住宅建替え

第一順位の教育費の確保を確実に行いたいと考えた場合、公立なのか私立なのかによって準備すべき教育費が変わってきます。また、子どもに将来の負担を掛けることになりますが、奨学金の活用の有無によっても変わってきます。まずは、教育方針について整理することから始めてください。

その上で、お子さま3人分の教育費が「いつ」「いくら」必要なのか、これから働く奥様の収入も含めての家計の収支内でやりくりできるのかどうかをシミュレーションする必要があります。特に、下のお子さまは3歳ですので、順調にいって大学を卒業するのは19年後、ご相談者が61歳の時になります。お勤め先の定年や60歳以降の年収の変化なども考慮したプランニングが必要です。

妻の収入無しでは成り立たない

老後資金準備についても教育費準備と絡めて考えなければいけません。教育費が完全に終わるのが61歳とすると、教育費が終わってから老後の準備をするには期間が短いです。特に60歳以降は収入が落ちることも想定されますので、教育費準備と合わせた老後資金準備も重要となってきます。

具体的な準備としては、将来受け取れるであろう公的年金の試算をした上で、老後に必要な生活費との差額を準備する必要があります。

現在、住居費が掛からない中で月々7万円の貯蓄のみということは、住宅ローンや教育費の負担が増えることを考えると、妻の収入無しでは成り立たないでしょう。来年からどれくらい収入が得られる可能性があるのか、また何歳まで働く予定なのかについてもしっかりと考えましょう。

これらを整理し、シミュレーションを作成し、ある程度見通しを立てた上で、住宅の建替えの予算を考えてください。ローンも35年で組むことも可能ですが、60歳もしくは65歳で終わるように期間設定をしてください。35年ローンでギリギリの生活で組んでしまうと、リタイアした後のローン返済や生活が成り立たなくなるリスクがあります。

ローンを組む前にしっかりとすべきこと

今回のポイントをまとめると、確認・整理すべきことは以下の通りです。

〇子どもの教育の方針(公立or私立、奨学金活用の有無など)
〇子どもの成長による生活費の上昇
〇夫の今後の収入の推移・リタイア時期
〇来年以降の妻の収入、働く期間
〇将来の公的年金の試算
〇リタイア後に最低限確保したい生活費

以上をご夫婦で話し合った上で、FPなど専門家に依頼しシミュレーションを作成しましょう。そうすると、安心して購入可能な建替えの予算を算出することが出来ます。先に住宅ローンを組んでしまうと、後からできることが制限されてしまうので、事前にしっかりと計画を立てることが重要です。

大事なお子さまの教育費や老後資金を確保した上での住宅建替えの実現を目指しましょう。

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