進学不安に10万円給付金問題…年末年始子どもの不安を和らげるために親子でできること

年末年始は多くの人が新年の抱負を考える時期です。子育て世帯にとっては、年末年始は新年度の学びや進学の準備を意識し始める時期ではないでしょうか。とはいえ、長引くコロナ禍の影響で、新しい学校生活が始まることに不安を覚える子どもや親も少なくありません。

ベネッセコーポレーションが2021年8月に行った「コロナ禍での中学入学に関する意識調査」によると、約7割の子どもと保護者が中学入学に対して不安を抱えているという結果になりました。

また、昨今注目を集めている政府による子育て世帯への10万円給付政策は、配布方法は自治体毎に決定することになったほか、対象となる世帯に所得制限がかけられていることも一部議論を呼んでいます。

コロナ禍における進学に関する不安や家庭の経済面が子どもの心に及ぼす影響をどう考え、対処していったら良いのでしょうか。家族心理ジャーナリストで教育事業も展開する麻生マリ子さんに詳しく聞きました。


新型コロナがもたらした進学の不安

ベネッセコーポレーションが2021年8月に全国の小学6年生と中学1年生の子どもがいる約400世帯を対象に行った「コロナ禍での中学入学に関する意識調査」によると、小学6年生の世帯では中学入学について70%の子どもが、保護者に至っては76%が不安を抱えているという結果になりました。

具体的な回答をみると、「コロナに感染したら2週間位休まないといけないから中学の授業についていけるのか不安」、「コロナが終息するか不明な中で、中学という短い3年間があっというに終わってしまうのがとても心配」、「マスクをつけているので、友だちの顔をなかなか覚えられなさそう」など、コロナ禍特有の学校生活の過ごし方や学習面の遅れについて不安感が大きいことがわかります。

不安を和らげるためにできること

コロナ禍で行事の縮小や制限された学校生活が続く中で、学校だけの学びは限界もあります。子どもの考える力や書く力を育む教室『作文教室コロコト/こころtoことば』を運営する麻生さんは、「学校以外に学びの場を広げることは大きなメリットがある」と言います。

「コロナ禍では、言葉にできない不安や気持ちの揺らぎ、心身の不調を抱える子どもたちが多くいます。大人より子どものほうが変化に順応する逞しい面も見られますが、マスク生活でのディスコミュニケーションや混沌とした社会や保護者の不穏な様子を感じ取っている印象です。学校行事など少人数や分散で進める学校では自分の未来像を描き辛く、ロールモデルを見つけづらい問題もあります。そのため、学年や年齢の異なる子どもたちが一緒に学べる環境に参加することは健全な成長欲求の源となるでしょう」(麻生さん)

また、麻生さんはコロナ禍で学校生活に閉塞感が生まれやすいからこそ「学校だけが世界ではない」と家庭で教えることが大切だと話します。

「親せきや地域のコミュニティ、さらに習い事や郊外活動など、感染対策に注意しながら信頼できる大人との繋がりを作り、学校や親子関係以外に“逃げ場”となる居場所を持つことは、子どもの視野を広げます。学校以外の学びの場は学習面だけにとどまらない子どもの心身の成長に貴重な役割を果たすはずです」(麻生さん)

お金について、親子で一緒に学ぶ

岸田内閣が決定した新型コロナウイルス経済対策の中でも大きな目玉となっている18歳以下へ1人10万円相当を給付する給付金は、一律現金で給付にするのか一部クーポンで割り当てるのかという給付方法の混乱もさることながら、「世帯主の年収960万円未満」という所得制限について一部で批判が集まっています。

子ども自身も、今回の給付を巡る親たちの動きや感情は察知しているでしょう。『給付金をもらった/もらってない』という情報の伝わり方によっては、子ども自身の心や子ども同士の関係性に影響を及ぼすことも考えられます。今回の給付については、どのようにコミュニケーションをとっていけばいいのでしょうか。

「保護者の価値観や考え方は子どもに大きな影響を及ぼします。しかし価値観や考えかたに正解はありませんから、子どもの視野を広げるためにも、多様な価値観や考えかたに触れる機会を持ちたいところですね。日本では大人ですら『儲ける/高い収入を得る=ずるい』という“妬み”の感情を抱く傾向がありますが、高所得者がそこに至るまでには様々な自己投資や努力があります。また、日本は所得に応じて税金が課されていますので、高所得者は納税して経済や社会を支えてくれている人たちであることは子どもにも伝えるべきでしょう。」(麻生さん)

日本人が抱きがちな「お金=汚いもの」という思い込みは、お金の教育の遅れが原因のひとつと言われています。自分とは異なる立場や状況にある人を思いやること、表面上は見えないことにも想像力を働かせることを大切にしてほしいと麻生さんは話します。

「保護者自身がお金をニュートラルなものとして捉えられるよう、お金に対する価値観を改めたりお金について学んだりする必要があります。コロナ対策として世界で実施された家計支援策を調べたり、今回の給付金の是非などを子供と一緒に学び、議論していくとよいでしょう」(麻生さん)

麻生さんによると、親子双方に良い学びのためには「(1)事実と意見をわける」、「(2)子どもの考えを否定せずに受け止めること」が大切だといいます。例えば、給付金であればまずは決定した事実だけを伝えます。その上で親も子も「私は」を主語にして意見を交わします。また、海外の感染状況をニュースで知ったら、その国の商品をスーパーで探してみるなど、生活の中に知識と体験と繋げる工夫をするとよいそうです。

コロナ禍が始まってもうすぐ2年。コロナ禍によって子育て世帯を取り巻く環境や状況は今なお変化し続けています。当然、子どもたちの心理的な負担も少なくありません。年末年始は親子で年始や次の春から始まる学校生活や学びについて、ゆっくり話し合う機会にしてみてはいかがでしょうか。

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