第16回「いきなりズージャ♫ ①」〜療養中のPANTAが回顧する青春備忘録〜

PANTA,頭脳警察

ここ数週間、ジャズに漬かりっぱなしで、かつてこんなにジャズの中に身を置いたことはなかったろうというくらいの体験。このジャズの閉鎖的な世界に突っ込んでみたいと思い、ジャズ屋さんからの強力な反撥も必至なので、言葉を選びつつ、ショバを替えて(バンドマン的に逆さ言葉)言いたい放題言わせてもらおうと思っています。 いきなり「PANTA、ジャズ唄え」と「Goodbye Pork Pie Hat」の譜面とそれ以外の候補曲のリストを出してきたのは義兄の故・板谷博だった。地獄はここから始まった。唄えと言ったのは、自分のバンドのギルティ・フィジックが『VAL』というアルバムを出したので、早い話が、客寄せのために人寄せパンダでなく人寄せPANTAで唄えということだった。しかし『VAL』は凄いメンツ、松風鉱一と共にフロントを形成し、石渡明廣、三好功郎、八尋洋一、小山彰太が脇を固めている。 彼の妹と一緒になり、両親はかわいそうだ。長男はジャズ屋、妹はロック屋と一緒になっちゃったんだから。まさか義兄がジャズ屋と知らず、付き合い始めた関東学院文学部のマドンナに連れられ、新宿ピットインへ連れていかれた。有名な店だが、新宿で不良していた自分にとっては入ることさえ初めて。一番前に座らされ、2メートルの距離で激しくピアノを弾き続ける男。これがあの有名な山下洋輔か、しかしよくミスタッチしないな…。後ろでトロンボーンを咆哮させる義兄、自分が入って山下洋輔カルテットになるのが夢なんだと、終演後に聞かされた。

© 有限会社ルーフトップ