サファテが日本球界に与えた特大のインパクト 惜しまれる引退…功績を振り返る

今季限りで現役引退したデニス・サファテ【写真:藤浦一都】

年間54セーブの大記録を達成したレジェンドが、今季限りでユニホームを脱ぐ

2021年11月30日、ソフトバンクのデニス・サファテ投手が今季限りでの現役引退を表明した。日本では広島、西武を含めた3球団でプレーし、通算234セーブを記録。シーズン54セーブ、43イニング連続奪三振、両リーグ30セーブといった数々の記録を打ち立てた。

日本でのプロ生活は通算11年間だが、最後の3年間は故障の影響で登板がなく、実働は8シーズン。そのうち、実質上の最終年となった2018年がわずか6試合の登板だったことを踏まえると、約7年という期間で数々の記録を樹立したことになる。

そんな活躍を回顧するとともに、「キング・オブ・クローザー」が残した数々の大記録について、実際の映像とともに振り返っていきたい。

デニス・サファテの年度別成績【画像:(C)PLM】

2017年は歴史的シーズン…シーズンMVP&日本シリーズMVP&正力松太郎賞

まず、NPBで記録した年度別成績について見ていきたい。

2011年に広島に入団し、来日1年目から抑えとして35セーブを記録。翌2012年は前年最終盤に負った故障の影響もあり、調子を崩してクローザーの座からも外れることに。しかし、同年オフに西武へ移籍すると再び調子を取り戻し、中継ぎと抑えを兼任しながらフル回転の活躍を見せた。

2014年からはソフトバンクに活躍の場を移し、移籍初年度からクローザーの座に定着。セ・パ両リーグで30セーブの快挙を達成した。2015年には当時のパ・リーグ記録を塗り替える41セーブを挙げ、自身初の最多セーブを受賞。翌2016年には前年に自身が打ち立てた記録を更新し、2年連続の最多セーブに輝いた。

在籍4年目を迎えた2017年は例年以上の安定感を誇り、NPB史上初となる50セーブ超えという偉業を成し遂げた。日本シリーズでも3イニングを投げた第6戦を含め、3試合で5イニングを無失点という圧倒的な投球を披露。3年連続となる最多セーブのみならず、シーズンMVP、日本シリーズMVP、正力松太郎賞といった各種の個人賞も総なめにする、まさに歴史的なシーズンを送った。

2017年終了時点で、NPB通算229セーブ。名球会入りの目安となる通算250セーブまであと21に迫っていた。しかし、2018年に股関節を負傷し、手術を行ってからは故障との戦いに。2019年にはプレシーズンに実戦復帰を果たすも本来の状態には戻らず、2020年には再び手術を受けた。その後も日本での復帰登板は叶わないまま、2021年限りでの現役引退を決断した。

優勝決定試合で勝利投手になった歓喜や前人未到シーズン50セーブの瞬間

ここからは、サファテが打ち立てた数々の記録や、思い出深いシーンの数々を、振り返っていきたい。

○絶体絶命のピンチを抑え、優勝決定試合で勝利投手に(2014年10月2日)

2014年のパ・リーグの行方を占う、10月2日の大一番。1-1の同点で迎えた延長10回表、サファテは2死満塁と絶体絶命のピンチを迎えた。だが、百戦錬磨のストッパーはここで4番のペーニャを邪飛に打ち取り、勝ち越し点を許さず。直後のサヨナラ勝ち、そしてリーグ優勝への流れを作ってみせた。

○43イニング連続奪三振(2015年)

サファテはリリーフながら2度のシーズン102奪三振を記録するなど、抜群の奪三振率にも定評があった。2015年には、43イニング連続奪三振の日本新記録を樹立。それまでの記録が28イニングと15イニングも少なかったことを考えれば、奪三振力は、NPBの歴史上においてもまさに傑出したものだったと言える。

○前人未到のシーズン50セーブ(2017年9月10日)

4点差で迎えた9回裏に3連打で1点を返され、なおも走者が2人残った状態でマウンドに上がったサファテ。そこから3者連続三振とまさに圧倒的な投球を見せて火消しを完遂し、ついに50セーブの大台へと到達してみせた。長いNPBの歴史においても、年間50セーブ以上を記録した経験を持つのは、サファテただひとりだ。

NPB史上にその名を残す、まさに「キング・オブ・クローザー」

○パ・リーグ年間MVP(2017年)

サファテが投じる速球の伸びは、まさに凄まじいの一言だった。2017年の速球による三振の一部をまとめたこの映像の中にも、高めのボールになる速球に、打者がつい手を出してしまうシーンが多く含まれている。高めに伸びる速球と、低めに落ちる変化球の双方で容易く空振りを奪える点が、サファテの奪三振率の高さを支えていたと言える。

サファテは外国人史上最多、日本人を含めても歴代5位となる234セーブを記録。それだけでなく、NPB通算の防御率は1.57、通算奪三振率は11.86と、投球内容そのものも圧倒的な水準に達していた。まさしく「キング・オブ・クローザー」の称号に相応しい。

通算250セーブまであとわずかに迫りながら、故障によって現役生活に幕を下ろすことになったことが残念でならない。しかし、数々の驚異的な記録と、その投球が日本球界にもたらした特大のインパクトは、王の名を冠する愛称とともに、いつまでもファンの心の中に残り続けることだろう。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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