鉄道各社が、スマートフォン専用の「デジタルチケット」を相次いで発売している。次世代移動サービス「MaaS(マース)」の推進に向けた取り組みの一環。スマホ画面に表示したチケットのため、紛失する恐れがない上、場所や時間を問わずインターネット上で購入できるのが特徴だ。各社はデジタル化によって観光地に多くの人を呼び込んだり、沿線利用者の利便性向上につなげたりしている。
京浜急行電鉄(横浜市西区)は1月31日まで、インターネットサイト「三浦COCOON(コクーン)」で、デジタル化した切符「デジタルよこすか満喫きっぷ」を販売している。
価格は既存の「よこすか満喫きっぷ」と同じで、品川駅発着だと3110円。発着駅からフリー区間の往復割引乗車券や、加盟施設の利用チケットなどがセットになっている。
利用方法は主に、スマホのチケット画面を駅係員らに見せるだけ。利用客からは「チケットを複数枚まとめて購入できて便利」といった声が寄せられているという。
同社はサイトの機能を強化。観光施設などの情報を掲載するほか、経路検索も可能にした。1月中旬からは予約、決済機能も追加。スマホ1台で周遊できるようにする。
「これまで観光施設が個別に集客していたが、地域全体でのマーケティングがしやすくなる」と担当者。今後、デジタルチケットの種類を増やす方針だ。
首都圏有数の観光地・箱根を訪れる客らをターゲットに、デジタルチケットを販売するのは小田急電鉄(東京都)。昨年10月から、専用サイト「EMot(エモット)オンラインチケット」で取り扱いを始めた。
箱根ロープウェイや箱根登山電車など、八つの乗り物が乗り放題となる「デジタル箱根フリーパス」(大人5千~6500円)をはじめ、箱根観光だけで13種類を用意。同社によると、紙も含めたチケット購入客のうち1.5~2割が、デジタルを選択している。「徐々に知名度が上がっている」と担当者。今後さらに利用が増えると見込む。
東急(東京都)も沿線の利用を推進するために、MaaSに力を入れている。
旅行の予約サイト・アプリ「Klook(クルック)」で電子乗車券「横濱中華街 旅グルメきっぷ」を販売。従来の紙チケットをデジタル化したもので、東急線・みなとみらい(MM)線の1日乗車券と対象施設の食事券がセットになっている。価格は大人3千円、子ども2千円。「駅改札窓口で買わなくて済むため、利用しやすくなるはず」と担当者は話す。
相模鉄道(横浜市西区)は、現時点でデジタルチケットを導入していないものの、取り組みについては前向きな姿勢を示している。