長崎スタジアムシティ  2024年開業予定 民間主導の“まち” 地域創生 工業地帯に雇用とにぎわい

長崎市幸町の長崎スタジアムシティ建設予定地

 長崎市幸町で、サッカースタジアムを核とした「長崎スタジアムシティプロジェクト」が進んでいる。通販大手、ジャパネットホールディングス(HD、佐世保市)が手掛ける民間主導の地域創生事業は2024年の開業を目指し、22年夏ごろに着工予定。“新たなまち”は「100年に一度の変革期」を迎えた県都にどんなにぎわいをもたらすのか。

 長崎スタジアムシティは、同HDが三菱重工業幸町工場跡地など(約7万4800平方メートル)に、子会社のサッカーJ2のV・ファーレン長崎とバスケットボールB3の長崎ヴェルカの本拠地としてスタジアム(約2万席)とアリーナ(約6千席)を整備。14階建てホテル(客室約250室)、11階建て賃貸オフィス棟、7階建て商業棟が隣接し、駐車場(約千台)も備える。総事業費は約700億円。
 Jリーグ57クラブのホームスタジアムは自治体が整備した陸上競技場が主流で、企業が整備したサッカースタジアムは4施設。スポーツ庁によると、ホテルやオフィスを併設する長崎スタジアムシティは「まちが一体となった珍しい事例」だ。国は昨年、地域活性化の核となるモデルとして「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ」に選定した。

長崎スタジアムシティ(2024年開業予定)

■ホテルから観戦

 なぜ「まちが一体」なのか。年間の公式戦はJ2、B3とも二十数試合。試合がある日もない日も、来た人が楽しみながら金を落とす仕組みが不可欠だ。同HDの髙田旭人社長は欧米を中心に6カ国約30スタジアムを視察。英国のサッカースタジアムや米国のボールパークの利点を「いいとこ取り」(髙田社長)し、それぞれの施設が相乗効果を生む「まち」の形にした。
 スタジアムは客席とピッチの距離がJリーグ基準最短の約5メートル。ホテルやオフィス棟からスタジアムを見渡せる。アリーナはライブのほか会議室としての利用も可能。スタジアム上を滑空するジップラインや地ビール醸造所を設け、温泉を掘る計画もある。人の流れを大きく変えそうなのが、長崎ロープウェイ(稲佐山山頂-淵神社)の駅舎を施設内に設ける延伸構想。市は22年度をめどに延伸可否の方向性を示す予定だ。

■少なくとも1000人
 雇用創出も大きい。同HDは、スタジアム・アリーナ、ホテルなど同HDが運営する部門だけで少なくとも千人超を見込む。別にオフィス棟に入居する企業、商業施設に入るテナントでも雇用が想定される。
 県、市は、それぞれ部局を横断した会議、チームを立ち上げ、同HDと連携を図っている。県は、大学生を対象に、変わりゆく長崎の魅力を伝え、定住、就職を促そうと、同HDと講義に出向き情報を発信。周辺の渋滞対策や駅からスタジアムまでの導線についても県、市で協議している。県政策企画課は「プロジェクトは複合的な魅力あふれる先進的な取り組み。市とも連携し側面から支援していきたい」としている。
 地元の受け止めも前向きだ。近くに工場を構える杉永蒲鉾(かまぼこ)の杉永清悟社長は「ビジネスチャンス。すでにスタジアムグルメを研究中」。同市幸町自治会の末永久志会長は「ずっと工業地帯だったところににぎわいが生まれる」と歓迎しつつ「周辺道路は一方通行にするなど渋滞を防ぐ対策を」と注文を付けた。


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