投資を通じて見えた「お金」と「人生」を豊かにする方法、将来の成果を目指すには?

時間に多少のゆとりができる年明けは、投資や資産運用についてじっくり考えるよい機会です。この機会に、投資や資産運用を成功させるために大切なルールを改めて振り返ってみましょう。若い頃の投資の経験や失敗、そこから学んだ時間の考え方、投資や資産運用だけでなく、人生のいろいろな場面で使える知恵も浮かび上がってきます。


投資で見るべきは、過去ではなく未来

投資や資産運用を成功させる上で重要な第一のルールは、「過去ではなく未来を見ること」です。なぜなら、投資では、「この会社は大きく伸びそうだ」「この産業は将来性がある」といったような未来への期待が実現した際に、リターン(利益)を得ることができるからです。

このように書くと、「そんなことは当たり前だ」と思うかもしれません。しかし、実際の私たちの行動を注意深く観察してみると、その当たり前を実行するのが実に難しいことに気づかされます。

例えば、投資や資産運用について考えてみるときに、最初に気になるのは、なんといっても株式や投資信託などの「値上がり率ランキング」です。実際に、ランキング上位の銘柄は人気になりやすく、ますます値上がりしていきます。逆に値下がりしている株式や投資信託に、あえて投資をしようという人は少数派です。周りに相談しても、「そんな値下がりしている株に投資するなんてリスクが高いからやめておきなさい」と言われるのではないでしょうか。

値上がりランキングに個人投資家が強い興味を持つことはよく知られているため、ネットでも、書籍や雑誌でも定期的に特集が組まれています。

しかし、値上がりランキングはあくまでも過去の実績です。未来に値上がりするかどうかを示す根拠とはなりません。このため、過去の実績だけを見て、株式や投資信託に投資をしたところ、その後思いがけず値下がりして損するということも起こり得ます。

情報を集めたはずが…投資で失敗した理由とは

かつて、私自身、過去のリターン実績がよいという理由だけで投資信託を買ったものの、その後、価格が大きく下がって、リターンがマイナスのまま売却するという失敗をしたことがあります。その時は、証券会社や銀行でいろいろ情報を集めて、日本の小型株を集めたテーマ型の投資信託(テーマ投信)を選びました。一部のIT企業の株価が高騰していたことから、過去のリターン実績が最もよかったのです。

しかし、ITバブルがはじけると、その投資信託のリターンの源泉となっていたIT企業の株価はあっという間に急落しました。結局、私はリターンを得るどころか、損失を抱えたまま投資信託を売ることになりました。

私の失敗の本質的な理由は、「過去」だけを見て判断した点にあります。過去にパフォーマンスがよかった商品が、将来も同じようによいパフォーマンスを出し続けられるという保証はありません。むしろ、日本で人気になる投資は逆のケースが多いのが実情です。

特にニューヨークで働いていた頃から日々実感しているのですが、金融の中心であるニューヨークと日本の間には、人気の投資先に半年から数年のタイムラグがあります。金融の共通言語は英語なので、言葉の壁によるタイムラグもあるのでしょう。しかし、それだけでは説明しきれません。やはり、「周りが投資していて、値上がりもしているものに自分も投資したくなる」という日本の投資家の集団心理も働いているように思います。

この結果、海外でピークが去った投資テーマが、日本で周回遅れでメディアやSNSで大きく取り上げられることがあります。このため、リターンが高く人気があるという理由だけで投資対象を選ぶのは、日本ではなおさら危険です。

本来、投資をするにあたって考えるべきは、「将来」のリターンの源泉とそのリスクです。将来を想像したとき、何が確実そうで何が大きなリスクだと考えられるのか、なぜ過去にうまくいったのか、成功するケースと失敗するケースの違いは何か、といったことをよくよく考え抜いた上で、投資の判断を行うことが重要です。

将来を見据えて、世界中の国や資産への分散投資

私の場合、「過去」だけで投資判断してはいけないとわかってからは、世界中の国や資産に幅広く分散して長期的に投資を行っています。これは中長期的な「将来」を考えたとき、技術革新によって世界経済が成長していくと考えるのが合理的だからです。

もちろん、リーマン・ショックのような金融危機などによって、世界経済が停滞し、資産がむしろ減ってしまうリスクもあります。実際、リーマン・ショックの際には、米国株や日本株の指数は直前のピークから50%程度下落しました。

しかし、同時期に債券や金の価格はむしろ上昇していました。特定の資産(例えば株式だけ、不動産だけ)に資産を集中させず、いろいろな種類の資産に分散投資することで、リーマン・ショックの影響を和らげることができたのです。そして、世界経済は、リーマン・ショックなどの度重なる危機を乗り越え、順調に成長してきています。

世界全体に投資すれば、リーマン・ショックのような金融危機で資産が減ってしまうリスクがある一方、世界経済が危機を乗り越えて成長していくことで、世界経済の成長を上回るリターンを目指すことができます。このように、未来に目を向け、過去の実績だけではなく、将来の「リスク」と「リターン」の両方を理解して投資をすることがとても大切です。

投資は時間軸を「長期」に設定する

投資や資産運用の2番目のルールは、「長期目線で投資すること」です。特に仕事や家庭に忙しい現役世代の場合には、短期のリターンではなく、長期的なリターンを目指すことが効果的です。

よくある失敗は、将来に向けてじっくり投資をしているのに、短期的な相場の動きに一喜一憂し、大きなリスクを取って投資しすぎてしまったり、逆に資産運用をやめてしまうことです。

世界全体のさまざまな資産に幅広く分散投資をするときには、中長期的に世界経済の成長を上回るリターンを目指しているはずです。しかし金融危機などにより、資産が少なくとも一時的に大きく減ることもあります。マイナスになった資産を見て「これ以上損をしたくない」と運用資金を預金に移すと、リターンがマイナスのまま資産運用をやめてしまうことになります。

リーマン・ショックの時に、株式などを底値で売却してしまい、その後の株価の回復を見て後悔した人は少なくありません。(後から、「リーマン・ショックの時に底値で投資しておけば良かった」と誰もが思いますが、当時、投資をしていた人は、それがどれほど難しいか、ご存じだと思います。)

このような失敗の理由は、人間の脳は短期的な成果に大きく反応するからです。場合によっては中毒になることすらあります。SNSの「いいね」の数をチェックしてしまうのも、友人のチャット上の反応がどうしても気になってしまうのも、私たちの脳の仕組みのせいです。(SNSは、短期的な成果に過度に反応しがちな人間の脳の仕組みのおかげで急速に普及しました。)

つまり、長期目線で投資することは、私たち人間の脳の仕組みからすると、とても難しいことです。冷静に考えると、相場が下がった時は、割安で投資できるチャンスです。頭ではそう理解していても、資産がマイナスになるとつい感情を揺さぶられます。脳に邪魔されずに長期投資を行うには、私たち人間の脳の仕組みをよく理解し、相場が動いたときこそ長期目線を意識することが大切です。

投資より仕事、仕事より家庭を意識する

「過去ではなく未来を見る」「時間軸を『長期』に設定する」という2つのルールは、私たちのキャリアや家庭にもあてはまります。

私たちにとって資産運用は将来を豊かに過ごすための手段であり、目的ではありません。ですから、もしも、プロの投資家ではないのに、投資の成果が気になって仕方なかったり、投資に大きな時間を費やしているとしたら、時間の使い方を振り返ってみる必要があります。

SNSや短期投資は、数時間や一日で成果が現れます。一方、仕事でスキルアップしたり、リーダーシップを発揮できるようになるには、数カ月や一年以上の時間を要します。

さらに子育てや家庭生活では、成果が見え始めるのに数年やそれ以上の時間がかかると思います。子育てでは、仕事のプロジェクトのように半年で成果が見えることはまずありません。しかし、これは私自身の反省であるのですが、ついつい家庭よりも仕事を優先させてしまいがちです。仕事は家庭よりも短期的な成果が見えやすいからです。SNSや投資も同様です。

脳は短期的な成果を絶えず求めるので、成果がすぐ出ることに没頭しがちになります。しかし短期投資やSNSなど、成果の見えやすいことにばかり時間を使っていると、後で振り返ったとき、自分が大切にしたいことに時間を割けなかったと深く後悔することになりかねません。

短期的な見返りではなく、人生の大きな成果を目指すこと

目の前の仕事をどう改善し、チームのメンバーとしてどのように成果を発揮していけるか。将来のために、どのような専門知識を身に付けられるか。家族やパートナーとの関係をさらに深めるために何ができるか――。

私たちは、時間がかかっても実現したいことにこそ意識的に取り組むべきです。成果が出るのに時間がかかることは、ついつい後回しにしがちですが、人生の目的はそこにあるからです。

私も放っておけばついつい仕事を優先してしまうので、週末は意識的に仕事から離れ、家族とゆっくり過ごす時間を持つよう、自分のルールにしています。

豊かな未来を創造するために、時間やお金といった資源を投じるのが「投資」です。リスクをとって投資することで、目先の小さな見返りではなく、将来の大きな成果を目指すことができます。過去ではなく将来を見ること、時間軸を「長期」に設定することで、お金の投資も時間の投資も、成功に近づくのではないでしょうか。

© 株式会社マネーフォワード