沖縄は今年、本土復帰50年を迎える。多くの出身者が暮らす横浜・鶴見は全国有数の「沖縄タウン」として知られ、今春に放送開始のテレビドラマの舞台にも選ばれた。1世紀以上にわたってウチナーンチュが根を張り、地元に息づいた「沖縄」は鶴見の宝だ。節目の一年となるだけに沖縄への理解が深まり、地域の魅力発信にもつながると期待が高まっている。
鶴見と沖縄の縁は100年以上続く。当初は工業地帯の労働者として、多くの人が移り住んだ。サトウキビ生産が主要産業だった沖縄を砂糖価格の暴落が直撃して生活苦に陥り、職を求めた事情もあった。近年は、南米などに渡った沖縄出身者の子孫となる日系人が親戚や知人を頼って鶴見へ移住している。
横浜・鶴見沖縄県人会は会員約300人。県人会会館が立つ一帯には沖縄料理店や食材店などが並ぶ。エイサーで練り歩く「道じゅねー」が受け継がれ、「沖縄角力(すもう)」は本土では鶴見でしか見られない貴重な伝統行事だ。
沖縄人気の高まりとともに多くの人々が訪れる。「鶴見ウチナー祭」は2016年に始まり、コロナ禍前には2日間で約7万人が訪れる一大イベントに成長した。
鶴見は今春からのNHK朝の連続テレビ小説「ちむどんどん」の舞台の一つになる。沖縄本島北部から上京してきたヒロインの下宿先という設定だ。
昨年12月には県人会や商店街、自治会、日系人を支援するNPO法人、大学などでつくる「ちむどんどん」横浜鶴見プロジェクト実行委員会が発足した。今年2月にホームページを開設し、地域情報などを発信し、地元や市内のイベントにも参加したい考えだ。鶴見区の担当者は「行政でなく地域の方々が主体となって、『沖縄』で鶴見を盛り上げていきたい」と話す。
那覇市出身で県人会青年部事務局長を務める実行委員長の下里優太さん(40)は「鶴見と沖縄は融合しており、切っても切り離せない。鶴見から沖縄を、沖縄を通じて鶴見を発信していきたい」と語る。
本土復帰から50年の節目でもあり、「注目が集まるだけに、沖縄の歴史や当時の様子を知り、置かれている現状を考えるきっかけになれば」と期待している。