岡田篁所の足跡たどる特集展 長崎文化の長老的存在 歴文博で16日まで

さまざまな資料を通して岡田篁所の足跡をたどる特集展=長崎市、長崎歴史文化博物館

 長崎出身の儒学者、岡田篁所(こうしょ)(1820~1903年)に光を当てた特集展が、長崎市立山1丁目の長崎歴史文化博物館2階特集展示室で開かれている。西道仙らと共に明治期の長崎文化人の長老的存在だった篁所の足跡をひもといている。

岡田篁所

 江戸後期に長崎で生まれた篁所は、彦根藩士で儒者の宇津木清区が長崎・本大工町に開いた塾で学び、16歳の時に清区と共に大阪に出た。しかし、清区が師の大塩平八郎の反乱をとどめようとして殺害されると、江戸に出て儒学や医学を学んだ。
 明治になる前には長崎に戻り、医師として活動したとされる。1872(明治5)年に中国・上海を旅行し、当時の清人らとの筆談記録などを「滬呉(こご)日記」としてまとめた。同日記は、明治初期の日本人による中国渡航記録の早い例として、日中文化交流の研究で注目されているという。
 帰国後はさまざまな地域の文化人らと長崎で交流。長崎学の大家、古賀十二郎が篁所の遺稿を収蔵し、高く評価しているという。
 同展では、市内で今秋見つかった82歳の時の写真(個人蔵)など関連資料約40点を展示。篁所が跋文(ばつぶん)を寄せた書画や、篁所が交流した当時の中国の著名な画家の作品などを通して、幕末明治期の長崎の文人文化や、国際交流の様子を伝えている。
 同館の長岡枝里研究員は「篁所の交際関係などをたどり、当時の長崎の中心的な人物だと分かった。篁所を調べることで、あまり研究されてこなかった明治期の長崎の人の活動も見えてきた。これからさらに資料が出てくると思う。まずは名前を知ってもらいたい」と話している。
 展示は1月16日まで。常設展観覧料が必要(県内小中学生無料)。


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