被爆体験の継承へ 長崎の市民団体が「証言2021」発行

「証言2021」を発行した長崎の証言の会の森口事務局長(左)と山口編集長=長崎市役所

 被爆証言の記録などに取り組む市民団体「長崎の証言の会」は、年刊誌「証言2021-ナガサキ・ヒロシマの声」を発行した。今回の特集は官民が所有する原爆・戦争資料の保存の在り方について、現状や課題を整理した。同会は「被爆者が亡くなっても、資料は被爆者が戦後どう生きたかや、長崎のまちがどう変化したかを語る。保存は、被爆体験の継承に大きな意義がある」と強調する。
 特集は資料保存に取り組む研究者ら4人が寄稿。広島市立大広島平和研究所の四條知恵氏は、長崎県が原爆被害や被爆者援護、戦後復興などに関する歴史資料を十分に保管していない現状を批判する。
 同会編集長の山口響氏は被爆者や戦争体験者ら「個人」所有の日記やメモ、関係する「団体」の会議録や機関誌などが、保管すべき資料として扱われてない現状を指摘。公的機関がその受け皿として、資料の受け入れや公開体制を整える必要性を記述している。
 この他、長崎の被爆者や遺族らが寄せた被爆証言や同会の活動記録なども収録している。14日に記者会見した同会の森口貢事務局長(85)は「証言を集めるのは難しくなっているが、若い人にも核兵器の残忍さを知ってほしい」と語った。
 1969年に創刊し今回で通算78冊目。A5判、226ページ。2100円。新型コロナ禍で修学旅行生らに被爆遺構を案内する活動の機会が激減し、収入が途絶えているとしてカンパへの協力を呼び掛けている。問い合わせは同会(電095.848.6879)。


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