<社説>県民意識調査 しまくとぅば継承 本腰を

 うちなーんちゅであることが誇りで文化や芸能を重んじる。しまくとぅばについては愛着を感じる一方、使いこなすことができない。低所得に悩み、基地問題や子どもの貧困問題を気に掛けている―。琉球新報が5年に一度実施している県民意識調査でこうした県民像が浮かび上がった。 深刻なのは「気になる問題」で74.5%が挙げた「所得の低さ」である。前回5年前の調査でもトップだったが、約20ポイントの増加となった。新型コロナウイルス禍の影響も大きいとみられる。3位に入った「子どもの貧困」も低所得の問題と直結している。

 元日銀那覇支店長の桑原康二氏は全国最低水準の県民所得について、企業の利益が全国最低水準にあると分析し、企業の収益力強化を提言している。22年度から沖縄振興特別措置法が10年間継続される。新たな制度設計へどのようにつなげるのかが問われている。

 米軍基地については「撤去」「縮小」を合わせて62.6%で前回から2.1ポイントの増加。撤去は5.8ポイント増えた。米兵の事件、事故のほか、近年は有機フッ素化合物の流出も問題化した。基地内の新型コロナについては情報共有もままならず、感染防止への意識も欠落していると言わざるを得ない。県民の基地負担は増している。県政が訴え続け、玉城デニー知事が感染症対策の障壁とも指弾する日米地位協定の改定に政府は踏み出す必要がある。

 しまくとぅばを話せる人が前回から15.8ポイントの大幅減で25.4%となった。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が指摘する琉球諸語の消滅の危機に拍車が掛かっている。

 同じように消滅危機言語とされたハワイ語の復興は大きな参考となりそうだ。先住民の言語、文化の学習を必修とした。現代に合わせて新たな単語を生み出し、あらゆる場面で話せるような取り組みを続けた結果、1980年代には18歳以下の話者が35人だったが、現在、ハワイ語で教育を受ける生徒数は3千人を超えるようになったという。具体的な施策を学びたい。

 悲観すべき数値だけではない。調査では、話せるようになる可能性のある「潜在話者」が全世代の約6割に達する。県も普及推進行動計画を策定するなど、官民を挙げて普及に向けた意識は高い。ただ、22年度が最終年度となる県計画は「主に使う」「共通語と同じくらい使う」が45.4%となるようゴール設定していたが、達成は難しい。

 77%がしまくとぅばに愛着を感じ、親の7割が子どもに「使えるようになってほしい」と答えた。郷土の言葉に対する意識の高さは、毎回の調査に表れるうちなーんちゅとしての誇り、郷土愛の高さとも関連し、アイデンティティーの母体ともなる。体系的に身に付ける仕組みづくりなど、消滅危機からの脱却に向け、より知恵を絞る必要がある。

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