核戦争に勝者なし

 「…私たちの文明を守る政策はただ一つだ。それは、核戦争に勝者はあり得ず、核戦争は決して戦ってはならないというものだ」「私たちの夢は核兵器が地上からなくなる日が来ることだ」▲年明け早々に飛び込んできた核保有5カ国による共同声明の一節-ではない。発言の主は米国の第40代大統領ロナルド・レーガン。1983年11月に来日した際、国会での演説でこう述べている。「演説要旨」を当時の本紙で見つけた▲誰も勝者になれないから戦ってはならない…という論法には違和感も覚える。核による攻撃に対しては核による報復を覚悟しなければならない、という核抑止論の危うい均衡を説明し、肯定したにすぎないようにも思えるからだ▲それでも東西冷戦のさなかになされたレーガン発言の歴史的な意義は大きい。問題は、そこから先へなかなか前進できないままで過ぎた40年近い時間▲米中ロ英仏の首脳が改めて「核戦争に勝者なし」とうたう声明を発表した。明るいニュースには違いない。しかし、声明が目新しく映るのは、長い長い長いサボタージュの結果であることも忘れてはならない▲“本気”が示されなければ、五大国への風当たりは弱まるまい。額面通りに受け止めていいのか-世界は半信半疑のまま、次のステップに目を凝らす。(智)

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