竹林再利用に「科学の芽」賞・諫早農高食品科学部 竹パウダー活用、キノコ菌糸増殖研究

「科学の芽」賞を受賞した生徒ら=諫早農業高

 長崎県諫早市の県立諫早農業高食品科学部(18人)が取り組んだ研究「森林環境保全に伴う放置竹林の再利用」が、筑波大の本年度「科学の芽」賞(高校生部門)に選ばれた。後継者不足などで全国的に放置竹林が増える中、その対策として、竹パウダー(粉末)をキノコの菌床栽培に活用できないかと考え、キノコ菌糸の増殖への影響など生産性、安全性を調べた。審査で「地元企業と協力して事業化も進められており、実用的な活動として全国への普及にも期待できる」と評価された。
 同賞は同大ゆかりの物理学者で、ノーベル賞受賞者の朝永振一郎博士の功績を記念し、小中高生の優れた研究を表彰。16回目の本年度は3部門に計2441件の応募があり、高校生部門では同部が全国最優秀の「科学の芽」賞に選ばれた。
 県内では島原半島などで盛んなキノコの菌床栽培は、栄養源として一般的に米ぬかやふすまが用いられているが、その栄養成分(ミネラル成分)の類似点から竹パウダーで代替できないか、と発想したのがきっかけ。約4年前に当時の先輩たちが始めた研究を後輩らが受け継いできた。
 その結果、米ぬかの菌床と比較し、キノコ菌糸の増殖スピードはシイタケで約2倍(竹パウダーを60%以上添加)、マイタケが約3倍(同50%以上添加)、キクラゲが約2.4倍(同70%以上添加)といずれも早かった。その影響をもたらしたのは竹に含まれるカルシウム、ナトリウム、カリウムで、竹による抗菌効果も証明。味もおいしく、キノコを菌床栽培する上での生産性や安全性を示す研究結果になった。この研究で同部は他の全国コンクールでも最優秀賞に輝いている。
 昨年12月18日にオンラインで表彰式があり、賞状などを受け取った3年生で前部長、渡邉梓月さん(18)は「菌床を作って熟成させるまでは順調だったが、そこからキノコを発生させるのが難しかった。企業からアドバイスをもらうなどいろいろな支えがあって成果を出せた」、収集データの整理で中心的な役割を担った3年生、草野雄多さん(18)は「菌床を作る際の水分の配分量は季節や温度で変わり、その調整も大変だった。それだけにうれしい」と振り返った。新部長の2年生、吉田美優さん(17)は「先輩たちからしっかり受け継ぎ、他のキノコに応用できないかの研究にも取り組み、事業化につなげたい」と語った。


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