DeNA“守護神”候補が合同自主トレする理由 最大の課題克服へ「正々堂々争う」

合同自主トレを行うDeNA・山崎康晃【写真:宮脇広久】

三浦大輔監督から神奈川県厚木市での自主トレを継承

DeNAの山崎康晃投手、三嶋一輝投手、石田健大投手、伊勢夢大投手、昨季中にロッテへ移籍した国吉佑樹投手が6日、神奈川県厚木市内で合同自主トレを公開した。5人はいずれもリリーフ投手。特に山崎、三嶋、伊勢は、三つ巴でチームの守護神の座を争う立場だ。なぜポジションを争うライバル同士が“呉越同舟”でトレーニングをともにするのだろうか。

「レギュラーシーズンに入れば、抑えの座を勝ち取る、あるいは大事な場面で投げるために競争していかなくてはならない。まずは自分の調整をしっかりして、その上で正々堂々とポジション争いをする。今から(トレーニングを)一緒にやることで肌で感じるものがある」。こう説明したのは山崎だ。珍しいリリーバーだけの合同自主トレには、独特の緊張感が漂っている。

5人はこの日から11日まで、厚木市内の温泉旅館で合宿。毎日のスケジュールは午前8時15分、標高284メートルの白山(はくさん)への登山から始まる。その後、市内の球場に移動してランニング、キャッチボール、ノック、坂道ダッシュなどの基礎トレーニングに励むのだ。

もともとこの厚木自主トレは、長年エースの座に君臨した三浦大輔監督が現役時代に行っていた。そこへ三嶋、山崎、石田が相次いで弟子入り。ハマの番長が2016年限りで引退した後も継承している。メンバー中、最年長31歳の三嶋は「リリーバーが集まってきたのはたまたま。もともとは三浦さんの練習する姿から学びたくて始めましたが、ここにはグラウンドや体育館を手配してくれるなど、協力してくれる地元の皆さんがたくさんいる。みんなが毎年ここでやりたいと思っていて、現役引退以外で(自主トレメンバーから)抜けた選手はいません」と説明する。

合同自主トレの様子【写真:宮脇広久】

リリーフだけの自主トレーニング、競争と結束でリベンジへ

三浦監督就任1年目の昨年、屈辱の最下位に沈んだDeNAは“勝利の方程式”の再構築が最重要課題だ。開幕からクローザーを務めた三嶋は、59試合3勝5敗23セーブ、防御率4.08で、9月中旬からセットアッパーに配置転換された。特に巨人には、開幕戦で亀井にサヨナラ弾を浴びたのをはじめ、対戦防御率11.17と散々だった。

一方、2018年と2019年に2年連続で最多セーブのタイトルを獲得した山崎は、一昨年が防御率5.68の大不振。昨季途中、三嶋に代わって守護神に復帰した時期もあったが、9月下旬に3試合連続失点するなど本格的な復活とはいかなかった。

伸びしろを感じさせるのが、今年プロ3年目を迎える伊勢。昨年は10月に2度セーブ機会で起用され、いずれも失敗に終わったが、右サイドスローから繰り出す150キロ超の速球は威力十分だ。本人も今オフは、クローザーの座奪取に意欲を示している。

ちなみに、石田は先発もこなせるユーティリティ左腕だが、昨季は1軍登板33試合中32試合が中継ぎ。一昨年は全50試合が救援だった。国吉は昨年6月に有吉との交換トレードでロッテへ移籍すると、25試合17ホールド、防御率1.44。セットアッパーの役割をこなし、DeNA在籍時以上の存在感を放った。

チーム内での競争が激しくなるほど、活性化する」と山崎は言う。確かにその通りだが、一方で、DeNAの救援陣の結束が固いのも事実。昨季伊勢が抑えに失敗した時には、山崎、三嶋、さらに同じリリーバーのエスコバーまで声をかけ、若手の精神面をケアしたという。今季のクローザーの座は、現時点で白紙。ベイ救援陣は競争と結束を深めながら、“リベンジ”につなげることができるか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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