米国株式に投資できる投資信託にはどんなものがある?知っておきたい指標や注意点

2022年こそ投資を始めようと思っている方も多いかもしれませんが、最初に始める金融商品として「投資信託」はもってこいと言えます。少額の100円から投資を始められる上に、複数の投資先に一気に投資することが可能だからです。

今まで、全世界の株式を対象にした投資信託や、先進国の投資信託について話してきましたが、今回はアメリカの株式市場に連動する投資信託を考えていきましょう。


米国株を始めるのに知っておきたい指標

2020年時点で米国のGDPは21.4億ドルと1国で全世界の25%を占めています。また、2021年の米国市場の株価時価総額は40兆ドルを超え、全世界の60%にものぼっています。また米国市場のTOP5社の時価総額は日本全ての会社の時価総額より高と言うから驚きです。現在世界でも一強状態の米国ですが、今後も人口増加とGDPの成長が見込めることから「今までも伸びていて実績があるし、これからも伸びるはず」と、米国への投資がムーブメントになっています。

世界各国のPER・PBR・時価総額

人気の米国ですが、米国のインデックス指数に連動した投資信託やETFを通じて、幅広くまとめて複数の会社の株を購入できます。

米国の主なインデックス指標は以下の通りとなります。

●ダウ平均

ダウ平均は、アメリカのダウ・ジョーンズ社が発表する工業株30銘柄を対象とした平均株価指数で、「ダウ工業株30種」や、「ニューヨーク・ダウ」などとも呼ばれています。米国の株価動向を表す指数として用いられ、アップルやコカコーラ、ナイキやインテル、マイクロソフトなど、各主要業種の世界的な大企業30銘柄で構成されます。

日本でダウ平均に連動した投資信託は、

・iFree NYダウ・インデックス 管理費用:0.2475%
・eMAXIS NYダウインデックス 管理費用:0.66%
などがあります。

●S&P500

S&P500は、スタンダードアンドプアーズ社が選定した米国でも時価総額の大きな500社の株価に連動した指数です。時価総額加重平均となるため、時価総額の大きな企業の株価の影響が出やすい傾向にあります。この500社で米国の70%から80%の時価総額を占めるため、S&P500に連動した金融商品を買えば、ほぼ米国全体に投資することになります。またこの500社の利益の約40%は海外からもたらされているので、世界経済の発展を享受することにもなります。

S&P500に連動した投資信託は、

・eMaxis Slim S&P 500
・SBI Vシリーズ S&P500
などがあります。詳しくは以下の記事も参照ください。
[S&P500の具体的な買い方、投資信託や日本のETF、米国ETFで買うのは何が違う?]

●CRSP米国総合指数

米国株式市場全体を投資対象とした、約4,000銘柄から構成されているインデックス指数です。ちなみにCRSPはCenter for Research in Security Prices(シカゴ大学証券価格調査センター)の略称で、シカゴ大学ブース・ビジネス・スクールの研究センターの一つです。発表年は2011年と比較的新しく、時価総額加重平均で全米の時価総額の99%をカバーしています。この指数に連動したETFとしてVTIが有名ですが、VTIに連動した投資信託としては以下のものが有名です。

・楽天・全米株式インデックス・ファンド 管理費用:0.162%
・SBI・V・全米株式インデックス・ファンド 管理費用:0.0938%

どちらも非常に管理手数料が安く、S&P500では拾いきれない中古型株も含んでいるため、アメリカ市場全体の成長を捉えることができます。

●ナスダック総合指数

米国の主な株式市場には、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダック(NASDAQ)があります。この2つを合わせると、国際取引所連盟加盟国における米国の時価総額による市場シェアは約40%と、東京証券取引所の約6%と比べても圧倒的です。ナスダックは、正式名称は「National Association of Securities Deals Automated Quotations」で、この頭文字をとってNASDAQと呼んでいます。世界最大の新興企業(ベンチャー企業)向け株式市場で、アップルなどGAFAMやネットフリックス、テスラなどが含まれます。ナスダック市場全体に投資する投資信託はあまりなく、上位100社だけを選んだナスダック100(除く金融)に連動したETFにはQQQが有名です。投資信託は以下のものがあります。

・iFreeNEXT NASDAQ100インデックス 管理費用:0.495%
・インデックスファンドNASDAQ100 管理費用:0.484%
・MAXISナスダック100上場投信 管理費用:0.22%

一口に米国のインデックスと言っても、紹介した通りさまざまなものがあります。
運用成績を見てみると、ここ20年での年率平均は以下の通りです。

※2021年11月末時点 

投資の神様ウォーレンバフェットは本人が亡くなった後の資産はS&P500で90%を運用するように言ったというのは有名な話ですが、ここ20年の平均リターンは10%を超えています。また、最近人気が集まっているNASDAQナスダック100指数を見てみると、この1年は43.5%と大きく上昇し、ここ20年も年率平均11.7%となります。GAFAMといわれる成長企業を含み、その他の企業もCAMBRICと言われるデジタル革命を牽引するトレンド領域を押さえていることからも今後も成長が見込まれます。

※CANBRIC=ITトレンドの頭文字をとった造語
「Cloud=クラウド」「AI=人工知能」「Mobility=モビリティ」「Bigdata=ビッグデータ」「Robotics=ロボット」「Internet of Things=IoT」「Cyber Security=セキュリティ」こと

インデックスファンドは安全と過信してはいけない

また、「アクティブファンドではなく、インデックスファンドであれば安全」と思っていると、実はNASDAQナスダック100は、毎年12月に100社を選定して銘柄を入れ直すなど変化が激しいもので、極めてアクティブなファンドといえます。成長率も高い分、増減の幅が大きく、下がる時には大きく下がるので投資初心者は自分の資産がジェットコースターにのっているかのような激しさを感じるかもしれません。名著「ウォール街のランダムウォーカー」のバートン・マルキール博士によると、株式は非常に気まぐれで誰も株価の推移を予測することはできないからこそ、できるかぎり分散した株式市場全体をカバーするようなインデックスを選ぶべきと言っています。そういう意味では、上記の中ではCRSP US トータルマケット・インデックスが約4,000社へ分散投資したインデックスと言えます。

また、CRSP US トータルマケット・インデックスやS&P500に連動した投資信託は「つみたてNISA」で購入できますが、NASDAQ100に連動した投資信託は購入できません。

米国に投資すると言ってもいろいろなインデックスがあります。それぞれの特徴を捉えないで、年率の違いだけ選んでは下がる局面で不安になるでしょう。

米国全体の成長を信じたインデックス投資と考えるのなら、CRSP US トータルマケット・インデックスや、S&P500に連動したものを中心に考えるとよいでしょう。

そして、少し冒険として値動きが激しいNASDAQ100などを試してみるもの面白いかもしれません。人気の米国投資を考える際の参考になれば幸いです。

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