「誇りに思う」 主将の矜持最後まで 国学栃木・脳震とうで出場停止の白石 全国高校ラグビー

脳振とうの疑いで3回戦から出場停止となった国学院栃木の白石主将(奥)。裏方としてチームを支えた=8日午後、花園ラグビー場

 国学院栃木の白石和輝(しらいしかずき)主将はうつむく仲間たちの肩を叩きながら、何度も「ありがとう」と伝えた。「入学時には考えられなかった景色。ここまでこられたことを誇りに思う」。いつものりりしい態度を最後まで崩さず、名門の主将を貫いた。

 ロックとして先発メンバー入りを勝ち取ったのは3年生から。決して華やかなプレーヤーではなかったが、約1年前の部員投票で、チームメートから満票で選ばれて主将に。吉岡肇(よしおかはじめ)監督に「うちの大黒柱」と言わしめるほど、厚い信頼を寄せられていた。

 しかし、花園は悔し涙のスタートとなった。初戦の松山聖陵(愛媛)戦の前半13分、タックルの際に味方と頭部がぶつかり、負傷退場。脳振とうと診断され、大会規定により全試合の出場停止が決まった。最初で最後の花園は約10分で“閉幕”。「申し訳なく、ふがいない」。そこにいつもの明るい表情はなかった。

 それでも「チームの命はまだ続いている」と、主将としての矜持(きょうじ)が前を向かせた。練習では指導役に回り、試合中はベンチから仲間たちを何度も鼓舞。「和輝を日本一の主将にする」。チームメートたちも主将の不在をばねに一致団結し、快進撃を続けた。

 「来年、必ずリベンジを果たしてほしい。後輩たちならできる」。敗戦後は後輩たちに期待を込め、最後まで主将らしく振る舞った。国学院栃木の部員86人にとって、白石は間違いなく「日本一の主将」だった。

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