竜巻は予測困難 関東平野で多発 識者「条件知り警戒を」 真岡突風被害1カ月

突風で車庫兼物置の屋根の一部が吹き飛ばされ、母屋に倒れかかった現場=2021年12月1日、真岡市

 栃木県真岡市で竜巻の可能性がある突風被害が発生してから1カ月が過ぎた。本県を含め関東平野は統計的に竜巻が多い傾向にあるが、局地的に発生し短時間で消滅する竜巻を予測し、捉えるのは困難なのが現状だ。詳しいメカニズムなど未解明な部分も多く、専門家は「発生に結び付く気象条件を理解し警戒することが重要」と話す。

 真岡市で起きた昨年12月1日の突風では住家損壊など47件の被害が出た。同市など県東部では2012年5月、全壊13棟を含む住家被害494棟、負傷者12人に上る大きな被害も発生している。

 気象庁の統計で1969年以降、県内で発生した竜巻などの突風は88件。栃木市が13、真岡市10、宇都宮市8、日光市、大田原市6、足利市、佐野市などが5と目立った偏りはない。

 竜巻が専門の小林文明(こばやしふみあき)防衛大教授は「栃木というより統計的に関東平野は竜巻が多く発生している」と語る。地上と上空で変化する風により、発達した積乱雲がねじれやすい地理的条件が整っているとみる。

 都道府県別の竜巻発生確認数(1991~2017年)で本県は10件。関東地方は比較的多いが、北海道、秋田、高知、宮崎、沖縄など単独で多い自治体は全国にある。地理以外にも、夏場の台風など発生しやすい気象条件があるためだ。

 気象庁の加茂直幸(かもなおゆき)突風災害対策情報調整官は「いつ、どこで発生してもおかしくない」。小林教授も「山奥は覚知できない。発生数の実態はよく分かっていない」とも話す。

 今回の突風で真岡市の担当者は「被害が出た後に注意情報が発令された」と振り返る。気象庁の竜巻注意情報で、情報を出して実際に突風が発生した割合(的中率)は3~4%、発生した突風に対し情報を発表できた割合(捕捉率)も30%ほどにとどまる。

 予測は困難な現状にあるが、小林教授は「発達した低気圧と前線の通過、台風など栃木で竜巻が起こり得る季節ごとの気象条件が分かれば警戒できる」と指摘する。加茂調整官も、急に冷たい風が吹く、低く黒い雲が近づくなど「予兆も判断基準として頑丈な建物に避難するなど対策してほしい」と訴える。

県内で発生した主な突風

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