第36回「左右について」

私は左右がわからない。いわゆる左右盲である。 たとえば「右手を挙げてください」と言われたときにどっちが右なのか迷ってしまい、すぐに挙げることができないのだ。「えっと、右だから……」と右はどっちなのかを考える時間が必要となる。そんな話をすると「右は箸を持つほうだよ」と言われることもあるのだが、自分がご飯を食べているときの動作をする(考える)時間を経なければいけないので時間がかかることに変わりはない。 特に視力検査やタクシーの運転手に道案内するときなどは左右を咄嗟に判断しなければいけないので、いつも一か八かになってしまい、当たったらホッとし、間違っては恥ずかしくなったり、相手を戸惑わせてしまったりすることがある。 絶対的に困るとしたら戦場だろう。謎の生物やゾンビと戦わなければいけないときなどだ。戦闘中に仲間が敵に気づいて「右だ!」と教えてくれたとしても、私は咄嗟にどっちが右かわからないから「えっと、右だから……」などと考えているうちに攻撃されてしまう。「右に逃げろ!」と言われてもより危ないほうへと進む。ここで一か八か動いたとしても50%の確率で怪我をするか命を落とすのだ。 また私が仲間に敵の位置を教えなければいけないとき、「えっと、あっち。そっちじゃない!」などと言ってしまうことになり、仲間を失うことになる。 そこで私はイメージで覚えることにした。たとえば「右」がわかる風景を考え、それを瞬時に思い浮かべることによって判別するのだ。右判別専用の画像をすぐに表示できるようにしておくというわけだ。 以下がそのイメージである。 ・川合俊一と向き合ったときに分け目があるほう ・笑点を見ているとき、たい平がいるほう ・舞台上でレギュラーの西川君がいるほう ・舞台上でレギュラーの西川君が気絶したときに手を挙げているほう ・クールポコ。のネタを見ているとき、小野まじめ(臼)がいるほう ・マリオが進んでいくほう ・バンドでだいたいギターがいるほう これならば考える時間がかなり短縮されるから、生存率も上がることだろう。 可能ならば敵に気づいて「右だ!」と教えてくれるよりは「川合俊一と向き合ったときに分け目があるほうだ!」や「舞台上でレギュラーの西川君がいるほうに逃げろ!」と教えてくれるとさらに生存率が上がるのだ。

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