東京オートサロン2022にはモータースポーツの将来を示唆する2台のコンセプトカーが出展され、注目を集めた。1台目はトヨタが出展した「GR GT3コンセプト」、もう一台はスバルの「STI E-RAコンセプト」だ。どちらもレース参戦を想定して作られたモデルだが、こうしたモデルから今後のモータースポーツの方向性が少しずつ見えてきた。モータージャーナリストの永田恵一さんに解説してもらった。
GR GT3コンセプトの姿は新型スープラにつながる可能性も！
1台目はトヨタが出展した「GR GT3コンセプト」だ。GR GT3コンセプトは車名の通りGT3カテゴリーのレース参戦車を示唆したコンセプトカーである。
ここでGT3カテゴリーについて紹介すると、年間200台以上生産される2ドアクーペやスポーツカーといった市販車をベースとしたレーシングカーを使ったレースである。具体的な車種としては日産 GT-R、ポルシェ911などが代表的で、トヨタでは現在レクサス RC Fが参戦している。
GT3カテゴリーは自動車メーカーとの関係が深くないプライベートチームが中心ということもあって世界各国でレースが行われており、日本でもGT3カテゴリーのレーシングカーはSUPER GTやスーパー耐久に参戦可能だ。
GR GT3コンセプトに関する情報は現時点ではまったくない。
そのためここからは筆者の完全な憶測となるが「もしGR GT3コンセプトが世に出るなら、GT3カテゴリーのレギュレーションもあり市販車がある」ということになるだろう。この点から想像を膨らませると、まだ気の早い話だが、GR GT3コンセプトは何らかの形でスープラの新型モデルにつながるモデルなのかもしれない。
スバルはEVのレーシングカー「E-RAコンセプト」を公開！ 今後の市販EVにも技術が盛り込まれていきそうだ
2台目はスバルの「STI E-RAコンセプト」だ。E-RAコンセプトはスバルのモータースポーツ活動、スペシャルモデルとなるコンプリートカーやチューニングパーツの開発などを担当するSTI（スバルテクニカインターナショナル）の手によるEVのレーシングカーである。
STI E-RAコンセプトの成り立ちはエクステリアこそWEC(世界耐久選手権)などに参戦するプロトタイプレーシングカーのようだが、ベースは2シーターのGTカーで4つのモーターを搭載し、フルパワーとなるシステム出力は1088馬力というモンスターマシンだ。
現在のところSTI E-RAコンセプトが参戦できるカテゴリーがないため、全長20kmを超える過酷なコースであるドイツのニュルブルクリンク北コースのラップタイム400秒(6分40秒、ポルシェ911GT2 RSが6分43秒3)を目標に、今年中に国内のサーキットでの走行を開始し、ニュルブルクリンクでの走行は来年行われる予定だという。
STI E-RAコンセプトはEVということもあり、モーターで四輪それぞれをコントロールできることや1000馬力超えのシステム出力といった強みを持つ反面、車重は1690kgと重いため、どんな結果になるか非常に興味深い。
同時にスバルは今年トヨタとの協業で開発されたソルテラでEV業界に参入するだけに、STI E-RAコンセプトの開発から得たノウハウが何らかの形で市販EVにフィードバックされることも期待したい。
モータースポーツから市販車へ技術はより進展していくだろう
どちらのモデルにしても、モータースポーツの、ひいては市販車へフィードバックされていくのだろう。電動化がますます進んでいることから、EVのレーシングカーをはじめとする新しいモータースポーツ車両は今後さらに増えていきそうだ。レース現場でのノウハウの蓄積が、市販車のさらなる技術発展にもつながっていく。
コンセプトカーから未来のクルマを想像するのも楽しいものだ。
【筆者：永田 恵一】
