「顔認証」「ウェブ会議」でイノベーションをけん引する研究所 金日成綜合大学内で産学連携を実現

金日成綜合大学に設置された先端技術開発院のIT研究所は、朝鮮のソフトウェア開発における中核的な研究拠点だ。人工知能(AI)などの最先端科学技術に基づくIT製品を多数開発し、科学技術の産業化をけん引している。

1997年に創設されたIT研究所は、国家のAI研究・開発やIT製品の開発、情報産業部門で中心的役割を担う。年に1度開催される「全国情報化成果展覧会」で現在までに「10大最優秀IT企業」に4度選ばれたほか、科学分野における国内最高賞である2.16科学技術賞の受賞者をこれまでに20余人輩出した。朝鮮の科学者が執筆したAI分野の論文が、世界的権威とされるSCI(Science Citation Index)に登録されている学術誌に掲載されるなど、国際的にも研究成果が認められている。

 とりわけAIによる顔認証技術の研究では国内で最前線に立つ。2019年に顔認証による出入管理システムを独自開発して、平壌市内の病院などに導入した。

19年の全国情報化成果展覧会に出品した顔認証出入管理システム(朝鮮の今日)

 同研究所のチェ・チョルリョン所長(41)は、「世界的に顔認証による出入管理システムは最近になって初めて開発されたものではないが、当研究所で開発したシステムは世界的レベルをめざして研究チームが自らの力で独自に開発したものだ。われわれは世界と堂々と競える製品づくりをめざしている」と話す。

 2020年来の世界的な新型コロナ感染症の拡大で、朝鮮でも普及が拡大したウェブ会議システム「楽園」も同研究所が開発したもの。映像および音声の転送、データ共有、録画保存などにも対応し、国内におけるウェブ会議ではほとんどこのシステムが利用されている。

 他にもウイルス対策ソフト「クラッセ」(キタタキを意味する朝鮮語)など、実用的なソフトウェアを多数開発し、軒並み利用者の好評を得ている。

 IT研究所におけるイノベーションのカギは、産学連携による実践型の人材育成にある。

 先端技術開発院では教育と科学研究と生産の一体化をめざしており、傘下のIT研究所においてもその実践に取り組んでいる。

 研究所が求める人材像についてオム・チョルナム部員(41)は、「いかに博識かではなく、持っている知識を活用できる応用力を持つ人材」だと話す。

 同研究所では大学内に設置されている利点を生かして、数年前から学生たちの科学研究クラブを同研究所の人材育成のカリキュラムとして運営している。

研究討論会を行うIT研究所の研究者たち

 まず入部の段階から基準を厳しく設定し、その基準を満たす学生の中からさらに厳選した人材だけをクラブに受け入れる。選ばれた学生たちは学部のカリキュラム以外に、研究所が主催する最新情報技術のすう勢に関する講義を受け、最先端の研究開発にも参加する。この過程を経た学生たちが卒業後に研究所に配属される。

 チェ所長は、「一つの企業がソフトウェアの開発拠点になるためにはAI、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、サイバーセキュリティをはじめとする10の最先端技術を扱うことのできる能力を備えなければならない。今後も世界と堂々と競える人材の育成に努めていく」と力を込めた。

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