【連載】新潟の大学生発! SDGsから新潟の今を考える「エネルギーから見た世界、日本、新潟の現状(目標7)」

前回:【連載】新潟の大学生発! SDGsから新潟の今を考える「安全な水とトイレが世界中に行き渡るために、私達が知っておきたいこと(目標6)」

新潟カープの島田です。

今回は、SDGsの「目標7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」について見ていきたいと思います。

目標7ってどんな目標?

まず、目標のターゲットは以下の5つになります。

7.1 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。

7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。

7.3 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。

7.a 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率、および先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究および技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。

7.b 2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。

具体的な目標数値は決まっていませんが、エネルギーの世界的な普及、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの割合増大などが方向性として掲げられています(まさに目標の名前通り)。

世界の現状と課題

では、世界におけるエネルギーの現状と課題を見ていきましょう。

国際連合広報センターのSDGs報告2021によると、

・世界人口の3分の1が危険で非効率的な調理システムを使用している

・7億5,900万人が電力を利用できていない(そのうち75%がサハラ以南アフリカに暮らす)

・エネルギー効率の改善率を毎年3%上昇させる必要がある(今までは2%)

・暖房・輸送部門における再生可能エネルギーの割合を増やす必要がある

という現状が示されています。

いずれも重要な課題ではありますが、調べるなかで一つ目の内容が特に深刻に感じました。危険で非効率的な調理システムとは、たき火調理などを意味していると思われます。(出典:世界30億人が「たき火」調理、煙害なくすには,NATIONAL GEOGRAPHIC,2017)

たき火調理は、発展途上国で主に利用されており、非効率なだけでなく、火傷煙の吸引による健康被害を引き起こしています。具体的には、2011年、米国立衛生研究所は、原始的な調理用こんろの使用を原因とする死者数は毎年約200万人に達するという研究結果を報告しています。(出典:屋内で火を使って調理するこんろで年間200万人が死亡、米研究,AFP BB News,2011

また、2014年にWHOが発表した、大気汚染による死者数の推計値は毎年700万人となっています。(出典:環境汚染死因1位は料理用燃料,NATIONAL GEOGRAPHIC,2014

電気やガスを満足に使えないということが、直接死因にもつながっているのです。そして世界的に見ても、大気汚染や気候変動につながっている問題になっています。

日本、新潟の現状と課題

新潟東部太陽光発電所1号系列(新潟県ホームページより)

次に、日本に注目してみましょう。

各国のSDGsの達成状況を示しているSUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORTによると、達成度は他目標に比べて、高くなっています。当然ながら、日本は”エネルギーをみんなに”が達成されています。

ですが、”クリーンに”というのは再生可能エネルギー(以下、再エネ)の割合の点で、まだ改善の余地があるようです。日本の再エネの割合は2019年度で18%であり、発電容量は世界第6位になります。さらに内訳をみると、太陽光発電と水力がほとんどを占めています。

今年7月に発表したエネルギー基本計画によると、日本政府は2030年までに再エネの比率を36から38%を目標にしています。これは従来の目標であった22から24%をさらに上回る目標になります。

実際、近年注目されている気候変動や化石燃料の枯渇等を考慮すると、再エネの普及は急ぐ必要があると感じられますね。

ここで、新潟県の現状も見てみましょう。

新潟県産業労働部産業振興課による本県の再生可能・次世代エネルギー政策の概要をもとに新潟県の現状をまとめました。

・新潟県は国産天然ガス生産量の78%、原油生産量の69%を占める。

・新潟港と直江津港にLNGの受入基地があり、東北や関東にもエネルギーを供給している。

・発電量のうち火力発電が85%、再エネが15%である。再エネはほとんどが水力であり、県内のFIT導入設備の導入容量は全国40位

水力は全国の約9%を占める発電量がありますが、その他の再エネ発電はまだ全国に比べて進んでいないようです。特に、太陽光発電は、晴れる日が年間を通じて少なく、冬には積雪もあるため、容易でありません。

今後、新潟県は、地域資源の活用として風力発電の導入を進めていくようです。風力発電と聞くと、今までも海沿いの道路で見たことがあるという方も多いと思いますが、現在進められているのは洋上風力発電といい、海の中に風車を立てて、発電するといった発電方法になります。海外では主にヨーロッパ中心に導入が進んでいます。

洋上風力発電(画像はイメージです)

さて、国内における再エネの現状を見てきましたが、私たち個人としては再エネにどう取り組めばよいのでしょうか。環境省では、以下の3つの方法を提案しています(もっと詳しく知りたいと思われた方は、出典元をご覧になってみてください)。

①自家発電

②再エネ電力メニューの購入

③再エネ電力証書の購入

最後に

再エネを促進することは大気汚染、気候変動、化石燃料の枯渇といった問題から見ても重要です。しかし、再エネを普及させることは良いことばかりではなく、新しい問題も引き起こしています。

例えば、太陽光発電では、太陽光パネルの設置のために、森林が伐採されることで、土砂災害のリスクが生じることや、景観の悪化といった問題が起きています。また、長期的に見て、廃棄される太陽光パネルの廃棄物問題もあります。風力発電においては、風車と鳥との衝突(バードストライク)で多くの鳥が死亡しています。

再エネの普及は緊急かつ必須の取組ですが、長期的な持続可能社会の在り方を探しながら、取り組んでいくことが大切ですね。

今回の記事はここまでになります。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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初回:【連載】新潟の大学生発! SDGsから新潟の今を考える 第1回「SDGsの実現の先にある新潟の未来」

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