2021年に執行された選挙投票率を振り返る(データアナリスト 渡邉秀成)

2022年が始まりました。今年は第26回参議院選挙も予定されています。

昨年は衆議院選挙、県知事選挙、政令市選挙、その他市区町村選挙も数多く執行されました。数多くの選挙が執行されましたが、多くの選挙投票率が低い傾向にあります。

このような低い投票率を改善するために、投票をしないことに対して何らかの罰金制度を設けてはどうか?最低投票率を設定してはどうか?等、さまざまな意見があります。

投票率が低い低いと言われますが、2021年に執行された国政選挙、都道府県知事選挙等で選挙投票率がどの程度であったのかを振り返ってみたいと思います。

国政選挙、知事選挙、政令市選挙、その他の選挙の順序で投票率を見ていきます。

まず最初に国政選挙投票率から見ていきます。2021年10月31日執行 第49回衆議院選挙比例代表の投票率は男性56.06、女性55.79、計55.92%でした。前回の第48回衆議院選挙と比較をすると若干投票率が上がりましたが、
それでも投票率が6割をこえていません。

第49回衆議院選挙の投票率を都道府県別に比較をすると下記のようになります。全国平均投票率(55.92%)を0として、全国平均投票率から何ポイント高いか低いかを表現しています。

過去の選挙で投票率が高い傾向にある鳥取県、島根県は第49回衆議院選挙でも投票率が高いことがわかります。
一方、安倍前首相の選挙区がある山口県とその近辺の広島県、岡山県の投票率が低い傾向でした。

国政選挙の投票率は高ければ高いほど民意が反映されていると考えられますが、投票率が75%以下ですと、投票しなかった4分の1以上の有権者の意思がどこにあるのかが不明です。

続いて知事選挙の投票率について見ていきます。2021年執行された知事選挙は執行日順に岐阜県、山形県、千葉県、秋田県、福岡県、静岡県、兵庫県、茨城県、三重県、宮城県、広島県です。これら知事選挙の投票率を一覧グラフにしたものが下記になります。

知事選挙投票率を比較すると千葉県知事選挙、福岡県知事選挙、茨城県知事選挙投票率の低さが目立ちます。
これら選挙の開票結果を見ると、投票する前から選挙結果が大方予想できた等で投票に行かなかった有権者が多かったのかもしれません。全知事選挙で投票率が50%以下のほうが多いということも観察できます。

次に、政令市選挙投票率です。

政令市選挙は千葉市、名古屋市、さいたま市、仙台市、横浜市、岡山市、川崎市、神戸市と執行されました。政令市選挙でも投票率を50%をこえているものが神戸市、川崎市長選挙です。人口も多く、予算規模も大きいのですが、有権者の投票率は低い傾向にあります。国政選挙と同様に、投票に参加しななかった有権者の意思がどこにあるのかを正確に知りたいところです。

最後に、2021年1月17日から12月19日までに執行された全市区町村選挙の投票率を無投票以外の投票率について見ていきます。データは総務省、都道府県選挙管理委員会、市区町村選挙管理委員会と、選挙情報サイトである、株式会社イチニ運営 選挙ドットコム、株式会社VOTE FOR運営 政治山のデータをそれぞれ利用しました。

全市区町村長選挙の平均投票率、全町村議会議員選挙の平均投票率は下記のとおりです。無投票、補欠選挙、再選挙は除外しています。

全体的に町村議会選挙は投票率が高い傾向にあります。(国政選挙でも市区と比較をして町村の投票率は高い傾向にあります)

2021年執行の全部の選挙の投票率をひとつひとつ観察すると、投票率50%を下回る選挙が数多くあります。

国政選挙から、市区町村選挙までの投票率を観察していくと、投票率が50%にも届かない状態で選挙結果が決まっているというのは、有権者意思が反映されているのか、疑問に感じる部分もでてきます。

国政選挙、地方選挙に関わらず低投票率傾向が続いているなかで、国の重要事項を決める選挙等では、最低投票率を設定する等の仕組みを整えることも必要と思われます。

今回は2021年の国政選挙、地方選挙の投票率について振り返ってみました。

追記:このような各自治体の各選挙の投票率等は、公的機関である各都道府県選挙管理委員会が長、議会議員選挙ごとに過去から現在に至るまでの結果を一覧形式でPDF以外の形式で公開し有権者や住民がウェブサイト上で閲覧できるようになれば、投票率が高い地域、低い地域がひと目でわかり、有権者の投票率向上に役立つものと思います。

そして各都道府県選挙管理委員会が公表したデータを総務省が全体を統括する形式で、データをcsv形式等で機械処理しやすい形式で公開し、全国市区町村の投票率の傾向を、総務省サイトで公表してもいいのではないでしょうか?

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